遂に明日

 そして、あれからかなりの時間が経ち、遂に明日が俺の……ノヴァの弱体化イベントが起きる日になった。

 

「ノノ、ちょっといいか?」


 この約一ヶ月の間で俺が最強だってことは完璧に理解出来ている。

 だから、こそ、自信を持つように自分に言い聞かせながら、俺はノノに向かってそう言った。


「はい? 何か用ですか? ノヴァ様」


「……ちょっと、その、勘、なんだけどさ」


「はい」


「今日は何かが起きる気がするから、一緒に寝ないか? も、もちろん、ルラも一緒にさ」


 内心でめちゃくちゃ緊張しながらも、俺はそう言った。

 ルラは正直直ぐに頷いてくれると思う。

 だって、ルラはこの前兄妹で一緒に寝るのは普通だ、みたいなことを言ってたしな。……問題があるとすれば、俺たちは血が繋がっていないみたいだし、妹以上にルラのことを意識してしまうことだけど、それはもう仕方ない。

 少なくとも、今日だけは一緒に居ないとだからな。


「えっ? も、もちろん大丈夫ですよ。わ、私は仕事がありますから、もう行きますね」


 そう思っていると、ノノは急に顔を真っ赤にしたかと思うと、少し俯きながらそう言って、走り去っていってしまった。

 大丈夫、だよな? 嫌われたわけじゃないよな? いや、もう少し戦闘面以外でも自分に自信を持とう。ノノは恥ずかしくて走り去っていっただけだろう。大丈夫だ。


 ネガティブな方に考えないようにしながら、今度はルラにも同じことを言うために、ルラの部屋へ向かった。

 基本的にルラは自分の部屋かリビングにいるみたいだしな。

 仮にそこに居なかったとしても、探せば見つかる。……というか、何故か慌てた様子で出てきてくれる。


「ルラ、居るか?」


 ルラの部屋の前まで来た俺は、扉をノックしながら、部屋の中に向かってそう言った。

 

「兄さん? うん。居るけど、どうしたの?」


 すると、俺も少しびっくりするくらいの速度で扉が開いたかと思うと、いつも通り可愛らしい顔を見せながら、そう聞いてきた。

 ……血が繋がってない妹にこんなことを思うのってヤバいのかな。

 いや、血が繋がっていなくたって、妹な事には間違いないんだから、別にやばくなんて無いはずだ。ルラが可愛すぎるのが悪いんだ。俺は悪くない。

 

「俺たちは兄妹、だよな?」


「うん」


 突然の俺の意味不明な質問にもルラは嫌な顔一つせずに頷いてくれた。

 さっきルラは大丈夫だって考えたばっかりだろ。何を今更ビビってるんだ、俺。


「勘、なんだけどさ、今日は何かが起きる気がするから、俺と一緒に寝てくれないか?」


「に、兄さんと?」


「……嫌、だったか?」


「う、ううん、全然そんなことないよ! む、むしろ兄さんからそんなお願いをしてくれるなんて、嬉しいよ」


 嫌だった訳では無いのなら、良かった。

 

「あっ、一応言っておくけど、ノノも一緒だからな」


「えっ? ふ、二人っきりじゃないんだ……」


 ルラは残念そうにそう呟いてきた。

 ……二人っきりが良かったのか? 

 もちろん、そう思ってくれたのなら、嬉しいけどさ。

 最初の方の俺とルラはあんまり仲が良くないみたいだったからな。


「あっ、べ、別に兄さんと二人っきりが良かったって訳じゃない……ことも無いけど、ないんだから! い、一緒に寝るのは分かったから、わ、私はもう行くね!」


 そう言って、ルラもノノと同じように、顔を真っ赤にしながら走り去っていってしまった。

 ……ノノが走り去って行くのは分かるんだけど、ルラは普通に扉を閉じて部屋に戻ればよかったんじゃないのか?

 まぁ、そんなところも可愛いと思うし、全然良いんだけどさ。

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