凄く知ってる展開だ

「の、ノヴァ様ぁぁぁぁぁ」


 家に入ると、また顔をぐちゃぐちゃにしながら、ノノがそう言って俺に抱きついてきた。

 凄く知ってる展開だ。


「遅くなるかもって言っておいただろ」

「そ、それはそうですけど……昨日より遅かったですし、心配したんですよ」

「はいはい。心配ありがとよ。……ルラも、ありがとな」


 ノノには適当にそう言ってから、俺は隠れながらこっそりこっちの様子を伺っていたルラに向かってそう言った。


「わ、私は兄さんの帰りが遅くなるってちゃんと聞いてましたし、別に心配なんてしてないですよ! な、何となく、兄さんが怪我とかをしてないか、心配でここまで来ただけです!」


 すると、ルラは顔を真っ赤にしながら、明らかに矛盾したことを言って、リビングに向かっていった。

 心配してくれてたってことかな。……昨日も言ったけど、俺は強いんだから、心配なんてする必要、無いのに。


「……二人とも、心配ありがとな」


 そう思いながらも、俺は改めて二人にお礼を言った。……ルラはもうリビングに向かって歩いて行ってたけど、多分、聞こえたと思う。……少し見えた横顔が、赤くなってた気がするからな。

 心配する必要なんて無いとは思うけど、心配してくれた気持ちは素直に嬉しいよ。本当に。


「ノノ、夕食を食べるから、準備を頼む」


 そして、俺は未だに抱きついてきているノノを引き離しながら、そう言った。


「……分かりました。ルラ様の分と一緒に準備しますね」

「……ん? ルラの分……? まさかとは思うが、ルラもまだ夕食を食べてないのか?」

「……ノヴァ様が遅いからですよ」


 いや、関係なくね? 俺が遅くなるって言っていなかったのならともかく、遅くなるって言ってたんだから、絶対関係ないだろ、それ。

 そう思いながらも、俺は何も言わずに、念の為もう一度夕食の準備を頼んでから、ルラがいるであろうリビングに向かった。


「ルラ、先に食べててくれても良かったんだぞ?」

「べ、別に兄さんを待ってたわけじゃ無いもん! た、ただ、今日はちょっと遅めに食べたい気分だったの!」


 リビングに入るなりルラに向かってそう言うと、ルラは顔を赤くしながら、そう言ってきた。

 うん。可愛い。


「そうなのか? だったら、ちょうどいいな。一緒に食べるか」

「う、うんっ」


 どう考えても俺を待っててくれたってことくらい分かるけど、俺はわざとらしく、そう言った。

 



 そして、少し待つと、ノノが夕食を二人分持ってきてくれた。

 俺たちはノノに軽く礼を言って、ルラと一緒に夕食を食べ始めた。

 

 


「ご馳走様」

「美味しかったです」


 夕食を食べ終わった俺たちは、ほぼ同時にそう言った。

 そしてそのまま、ルラと一緒に食器を持って行った。 

 食器を置き終わったルラは、先にお風呂は譲ると言って、そのまま部屋に戻っていった。


 まぁ、俺も精神的に少し疲れてたし、ルラの言葉に甘えて、一人で風呂に入ってから眠りについた。

 

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