第31話 塾の算数

 授業の進みぐあいがあまりにはやすぎ。教え方もおもしろくない。

 ちっともわからないナナだったの。この算数のセンセーだめかも……。



 センセーが言うには、きょうは最初の授業なので、きほんの復習からっていう話だった。

 まあ、ナナでも四則演算しそくえんざん(たす、ひく、かける、わる)や分数の計算はなんとかなるかなって思う。


 いちおう小学校の授業についていけてるから。

 でも、逆算ってなると話は別。


 逆算ぎゃくざんは、四則演算しそくえんざんとは反対のルールで解くんだよって、サラッと言われてもねー。

 センセーみたいにスイスイ頭がはたらくわけでもないし……。

 ほんと、きょうはじめての人にも気をつかってよって感じだよね。


 そこで一番こまったのは、食塩水しょくえんすい濃度のうどの問題。

 ナナ、まったくのチンプンカンプンでやる気ゼロになっちゃった。


 さらに場合の数の問題で、「大小二つのサイコロがあって……」っていう文言が出てくることがあるじゃない。


 パパだったら、すぐに、「たて六個よこ六個のマス目の表を書いて」って教えてくれた。

 とても具体的でパパはイケてるよね。

 ここがちょっとパパのすごいところかな。ちょっとだよ、ちょっと。


 でもこのセンセーは、かっこの記号を使って答えを記しただけ。

 意味がまったく分かんない。


 なんだかパパに教わった方がいいかも……。


 そう思ったのが『約束記号やくそくきごう文字式もじしき』の問題のときだったの。

 「十五を六でわるとあまりが三、九を六でわるとあまりが三で……」っていう問題がよくあるよね。


 以前ナナは、パパになんでこんなことするのって質問してみたことがあるの。

 すると、パパはコンピュータの分野では、この『あまり』に着目しながら分類ぶんるいすることがけっこうあるんだって。

 だから小学生のうちからなれておかなくちゃいけないって教えてくれた。


 また、パソコンについてるエクセルっていう表計算ひょうけいさんソフトがあるでしょ。

 そのソフトに『関数かんすう』っていうアイテム、いいかえると道具があるんだって。


 その関数かんすうが、約束記号やくそくきごう文字式もじしきをきほんにしているらしいの。

 だから大人になる前に分かっておいたほうがラクだよってパパが話してくれた。


 でも塾のセンセーは、約束記号やくそくきごう文字式もじしきがしょうらい何の役に立つのか説明もしてくれないし、おもしろくもない。

 ただ答えを言ってホワイトボードに書いただけ。


 「ピーンポーンパーンポーン」

 ちょうど授業終了のチャイムが鳴って昼休み。

 チャイムってどこも同じなのかな。ちょっと不思議。


 ママが作ってくれたお弁当を、サラッと食べ終えた時点で一日の半分が終わっちゃった。



 



 

 


 





 


 


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