第7話 セレクション

 夏の季節での初の日曜日。湿度は高そう。

 天気予報によると、今日はくもりときどき雨って言ってた。今のところ雨はふってない。


 ナナはおっさんSCレディースU15のセレクションに参加した。

 会場はおっさんスタジオパーク。ここはふつうの人工芝とちがって、とくべつな人工芝らしいの。


 たしかにFCわかばの人工芝とちがって、クッションみたいに、はずむ力がすごいって感じ。

 ただ、あまりにふわふわしてて、足うらにガチッとした感触がない。


 タクはふだんここで練習してるんだけど、今日は会場が追浜国立大学での公式戦とあってここにはいない。


 もしここにタクがいたら、のどに小骨が引っかかってるみたいで、ちょっとやりにくい。

 その点、今回はラッキー。



 セレクションの参加者は全員、二面あるフットサルコートの区画に集められた。

 フィジカルコーチの指示でストレッチをはじめる。


 「右太ももの筋肉をのばしましょう」

 フィジカルコーチがセレクション生に指示する。

 

 ナナは右足をじめんに折りたたむようにすわる。そのまま左足を前の方にのばす。そして上半身をうしろに倒して空を見上げた。


 「では逆の左太ももをのばしましょう」

 ナナはさっきとは反対のしかたで左太ももをのばす。


 ストレッチをしながらまわりを見てみた。ゴールキーパー(以下GK)が八名、フィールドプレーヤー(以下FP)が約六十名。


 なんでGKだとわかるのかっていうと、今日やって来たGKが全員、GK専用グローブを手元に用意してたから。

 すごい本格的だなってびっくり。ナナは気を引きしめる。


 ストレッチが終わってチーム分けの指示を受ける。

 基本的には八人制のチーム分け。AチームからHチームまでの合計八チーム用意されてたの。

 

 おとなのサッカーは十一人制だけど、少年少女のサッカーは八人制ですることが多いんだよね。

 小学一年生から四年生までは八人制。

 五年生から十一人制を少しずつやり始め、六年生になるとその割合がふえてくるの。

 でも全国U12サッカー大会では、八人制がさいようされてるんだよね。

 ナナはCチームでさいしょから二番目の試合となるの。


 「ナナ? やっぱりナナだよね」


 とつぜん、うしろから声をかけられる。ふりむくと小柄な女子がひとりニコニコと笑いながら立ってた。

 「チュンチュンじゃん。このセレクション受けに来たんだ」

 ナナはそうこたえる。


 小泉すずめ、通称チュンチュン。県女子トレセンで出会って、なかよくなったの。

 でも、チュンチュンこのセレクション受けるなんて一言も言ってなかったよね。


 「ナナは何チーム?、すずめはAチームなの」

 「わたしはCチーム、チュンチュンは第一試合か……。がんばって、チュンチュン」

 「分かった、ナナもがんばって。第二試合ちゃんと見とくから」


 チュンチュンはササッとすばしっこく走りながら、となりのグラウンドへ向かっていった。


 あるコーチが、小泉はほんとスズメみたいに走りまわるなって言ってた。

 ナナはスズメを間近に見たことがないの。

 でもチュンチュンを見てると、スズメはこんな飛び方するのかなって想像できる。そんな女の子だった。







 

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