第8話 チュンチュンの突破

 雨がポツポツとふりはじめた第一試合。

 Aチーム、Bチームともに3-3-1のフォーメーションみたい。


 サッカーはポジションをおおざっぱにGKとFPに分けるの。

 さらにFPは、ディフェンダー(以下DF)、ミッドフィルダー(以下MF)、フォワード(以下FW)に区分されるんだよ。 


 このときGKの一人はのぞいて、残りのメンバーで、フォーメーションを数字で表すことが多いんです。

 たとえば、八人制のチームの場合を考えてみましょう。

 八人のうち一人はGKだから、残りの七人をチェック。

 DF、MF、FWの順に表すとすると、3-3-1はDF三人、MF三人、FW一人、とすることが多いよね。これが基本形。


 また、こうげきを重視するフォーメーション、2-4-1はDF二人、MF四人、FW一人のこと。

 超こうげきてきになると2-3-2っていうときもあるよ。


 AチームのチュンチュンはFWのワントップかな。

 あっ、ごめんごめん。FW一人のことをワントップって言うこともあるんだよね。



 第一試合、Bチームのキックオフで開始。そのチームのMFがAチームのDFラインのうらへボールをける。

 AチームのGKは前に出て、そのボールをキャッチ。と同時に、チュンチュンは中央から右のスペースへと走り出す。

 GKはパントキックでチュンチュンにパスを出す。チュンチュンはそのパスをむねでトラップしてボールを左足に落とした。


 さあ、彼女のショーが始まるよ、とナナは目をこらす。


 チュンチュンは左利きだけど右のスペースへ流れることが多い。

 そして右サイドのライン上でボールをキープしながらインナーラップしてくる味方にパス。

 または自分で敵のDFを抜いてセンターリング、もしくはシュートを打つ。

 今はインナーラップしてくる選手がいないから、DFを抜くのかなとナナは予想。


 それが当たった。


 彼女はボールを左足から右足へとボールをころがす。

 そしてふたたび右足から左足へとボールをころがし戻したしゅんかん、左足でボールを右スペースにちょこんとチップキック。

 そのままチュンチュンはチップキックされたボールめがけて猛ダッシュ。


 相手DFはいっしゅん、出おくれた。


 そのすきをのがさず、チュンチュンは縦にドリブル。

 相手DFはチュンチュンがセンターリングしそうなボールコースへとスライディング。

 が、チュンチュンはきゅうげきに右足で切り返してカットイン。

 左足にボールを持ちかえてドリブルし、ゴール右ななめまえ四十五度のスペース、いわゆるボックスへと入りこむ。


 相手GKが少し前に出すぎてる。


 そのすきをのがさないチュンチュンは、GKの頭上を超えるようにループシュート!

 ボールはフワッと上がり左ゴールポストに当たってゴールの中に入った。


 チュンチュン一得点!


 「おぉ…… 」

 グラウンドのまわりから見学者のため息がもれる。


 Aチームのコーチがチュンチュンをまだ出場してない子と交代させる。

 チュンチュンはナナの姿を見つけると、ニコッと笑いながら私に向かって手をふってくれた。

 ナナもチュンチュンに手をふってこたえる。



 彼女のセレクションが、なんなく終わっちゃった。

 








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る