第23話 終了

 現在アリーナチームは、サキさんが左FW、ボールを持っている選手が右DFだよ。

 

 サキさんが中央に入りこもうとするプレーからいっしゅん左足をふみこむ。

 つまりフェイクを入れて少し中央の下におりてきたの。


 ナナは守ってる味方のFWに、

 「パスコース消して!」

 って瞬時しゅんじに言ったけど、もうおそかった。


 すぐさま右DFがサキさんへ、くさびのパスを入れてくる。

 ナナはすぐにサキさんの方へいき、プレッシャーをかけようとする。

 

 そのしゅんかん、サキさんが右FWとダイレクトでかべパスをして、ナナの背後はいごのスペースを突いてきた。

 ナナはバックステップしようとしたが、おもわず足をすべらせてしまう。ここにきて痛いミス。

 

 敵の右FWとのかべパスで、サキさんはパスをうけるとれいせいにシュート。


 「ゴール!」


 アリーナチームが一点をあげる。


 そのあとアリーナチームはナナが笑っちゃうほど、ぐるぐるとポジションを回転させつづける。

 そして、くさびのパス、単独のドリブル突破をどんどんしかけてきて、点を取りまくったの。


 ナナたちはアリーナチームに回転されるんで、相手をマークしづらいし、マークの受け渡しもぎこちない。

 そしてナナたちを引き寄せようっていうパススピードでボールをけってくるの。


 くやしいったらありゃしない。

 でもまったくボールがとれない時間が続いただけ。

 

 十五分ほどつづいて、試合終了。

 混合チームは、何点取られたかなんて数えられない。

 それほどアリーナチームに攻め続けられちゃった。



 「十分間、休みをとります。アリーナチームのみんなは、もう一本試合があるからね」

 アリーナのヘッドコーチが、アリーナチームのメンバーに声掛けする。


 少し前まで一階にいた混合チームの残りのメンバーが、二階に上がってきてた。

 おそらくアリーナチームは残りのメンバーと試合をするのかな。

 それなら、今のうちにあいさつしとかなきゃ、とナナはサキさんの方へ行った。


 「あの……、サキさん。FCわかばの鈴木琢也すずきたくやの妹、鈴木菜那すずきななです」

 「ああ、あの足が速くて背の高いヤツのね」

 ぶっきらぼうなサキさんの返事。

 「はい、ごぶさたしてます」


 ここでナナは、あえてサキさんにたずねることにする。

 「あの……、私、アリーナに合格できるでしょうか」

 「ダメだね」

 あっさり言われてしまった。


 「まあ、アイツといっしょで足は速いけど」

 「けど、あとはなんですか」

 「パスの精度がまったくなってないね」

 「はあ……」

 「かべパスなら、マークしてくるDFから遠いほうの足にパスしなきゃダメ。基本がなってない」

 ナナは言葉が出ない。

 「まあ、他のチームでがんばって」

 「……ありがとうございました」

 サキさんにお礼を言うナナ。


 ……きついな、ナナ、ほんとガックリきちゃった。

 この場でバッサリ言われるのもなんだけど……、やっぱりきつい。


 これで、ナナにとってのカルディ府中アリーナのセレクションが終わっちゃった。


 

 




 

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