第36話 ゲーム形式 その四

 幸先さいさきよくナナのチームに一点が入った。

 すると、試合の流れが動く。

 「ピーッ」

 試合再開しあいさいかいのホイッスルが鳴った。


 相手チームは、ナナたちDF三人のパス交換こうかんを見て、右DFがウィークポイントだと判断はんだんしたみたい。そこを攻めに来る。


 相手MFはこちらの右DFのうらのスペースへボールをけり込んできた。

 敵のFWがそのボールを追っていき、マイボールにしてしまう。


 そのFWはこちらの右DFとの一対一のプレーを選ぶ。

 そしてフェイントを入れながらセンターリング。


 ボールが空中にまい上がった。


 ナナは、味方のMFがフリーの状態であることを確認しながら、その子にパスが渡るようにヘディング。

 ボールはその右MFの足元に収まった。


 「いいぞ、ナナ。ナイスヘディング!」


 ゴロウと高杉君が大声でまくし立てる。ふたたびタクが行って、二人に注意してるの。

 せっかくおうえんしてくれてるのに……。

 ちょっともうしわけない。その分、ナナはがんばるぞ。



 と、ここでスタッフがナナのチームの右DFをほかの選手とこうたいさせた。

 さらに中央のDFだったナナを左DFとポジションチェンジさせる。

 つまりナナは、左DFのポジションになったの。


 ボールがナナのチームのGKにわたる。そして中央のDFにパス。

 中央のDFはナナにパスする。さらにナナは左MFへと足元にパスする。


 パスを受けた受けた左MFはドリブルしながらDFラインまでおりてきた。

 ナナは円を描くように左DFから左MFのポジションへと移動、タッチライン上に陣取る。


 左MFから降りてきた現在の左DFは中央のDFにパス。

 中央のDFは少しドリブルしながらタッチライン上にいるナナにパスしてきた。

 それと同時に、先ほどの左DFが、ナナと中央のMFのあいだを通ってオーバーラップしてくる。

 

 ナナはオーバーラップしてきた左DFの前方のスペースへダイレクトパス。

 そのままナナは相手ゴールの中央のスペースを見ながら上がっていく。


 オーバーラップしてきた左DFは、中央のスペースをチラッとかくにんしてセンターリング。

 味方のワントップのFWがそのボールをつめにいく。


 ナナは「ここはスルーして!」と思ってたら、ほんとうにFWがスルーしてきた。 

 相手GKとゴールの位置をかくにん、右足のインサイドキックで確実かくじつにボールをゴールに入れた。


 「ゴール!」


 ナナ二点目。この得点はカルディ府中アリーナでの経験が生きたかな。

 円を描きながらのポジションチェンジがうまくいったみたい。

 得点できてよかった。ナナ、ちょっとほっとする。



 「ピッ、ピッ、ピーッ」


 主審しゅしんふえが鳴った。第一タームの試合が終了。

 両チームともグラウンドの外に出て、第二タームの二チームとこうたいする。


 ナナ、けっこう暑くて、のどかわいちゃった。水分取りたいな。

 

 「おつかれさまです、選手のみなさん水分補給すいぶんほきゅうしてください」

 なんとタクが、選手たちに水の入った白い紙コップを配り歩いてる。


 ナナは腹が立つのをなんとかおさえ、

 「ありがとうございます」

 と、小声で言いながら紙コップを受け取った。


 こんなナナがくやしい。

 でも冷水なんでヒヤッとしてる。んっ、おいしい。



 「鈴木菜那さん、ちょっといいかな」


 ふりむくと、クラブハウスの前で女性コーチとパパが立っていた。




 


 


 


 




 

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