第37話 兄の思い

 今日は本当にし暑い。何をしなくても肌がキモい。


 みなさん、こんばんは。ナナの兄、タクこと、鈴木琢也(すずきたくや)です。

 きょうは休みなのにとつぜん、おっさんSCアカデミーから電話がかかってきました。

 

 話の中身はレディースU15セレクションの手伝いをしてほしいとのリクエスト。

 オレとしてはついにバレたか、という思いと、なんでこのタイミングで、という思いがからみあってます。


 第一回セレクションでナナが落選らくせんしたとき、「よっしゃー!」と心の中でガッツポーズしながら、正直なんで落ちたんだろう、とも考えてました。


 

 前者ぜんしゃの思いはこんな感じ。

 ときどきレディースU15の女子たちに話しかけられるが、気をつけなきゃ、とオレは軽く受け流してました。


 ここでナナに、おっさんSCレディースU15へ入団にゅうだんされたら、オレがポンコツのアニキだとナナに言いふらされてしまう。

 それだけはさけたい。


 さっきも女性コーチに、ナナのことについていろいろ聞かれました。

 そのときオレは、

 「ナナはタレントのアラン千春みたいなもんですよ」

 と、おもわず口をすべらせてしまいます。


 それを聞いてたレディースU15の女子たちが、

 「『おっさんSCのアラン』っていいよね」

 という話になり、

 「アラン! アラン! アラン!」

 などと彼女たちが、ナナをおうえんしはじめる始末。

 オレはやってられません。


 後者こうしゃの思いはさらにふくざつです。

 

 はっきり言ってナナはオレよりうまいっす。

 くさびのたてパスをプロ並みにバシバシ決められる。

 それとくらべてオレは今でもあやしい。


 みなさんもこのセレクションを見ても分かるように、ナナのパスの精度せいどが以前より増してます。

 さらに相手のプレスをかわすパスも余裕よゆうでプレーできるんで、兄としてはホント参っちゃう。 


 また身長も女子の中では高い方だし、オレよりはまだまだだけど、足が速い。

 なんで第一回セレクション落ちたんだろう、とオレはあたまをひねってしまう。


 まとめると、兄としてこんなくつじょくを味わうとは情けないです。

 ほんと、やってられません。



 おっ、パパと女性コーチが話し合ってます。そのままナナといっしょにクラブハウスへ入っちゃいましたよ。

 おい、どうなってるんだ。みなさん、うご期待。




 


 

 

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