第28話 現状

 中学受験ちゅうがくじゅけんの過去問を解くなんてウン十年ぶりかな。

 ナナのパパこと鈴木陽一(すずきよういち)はこのことを考えるとうんざりします。


 おおむかし、じぶんが受験した中学の過去問はそれほど解いていなかったと、きおくしてます。

 はっきり言って小学生だったパパは、これを使った勉強のしかたがよくわからなかったからなんですよ。



 その重要性に気づいたのは、進学塾のアルバイトをしていたとき。

 当時、じゅく室長しつちょう中学受験ちゅうがくじゅけんをこう語っていました。


 「中学受験はさいごに『親の学力』がものをいう」


 せいせきがトップクラスの小学生なら、じゅくが、高偏差値こうへんさちである中学校の過去問の特別講義とくべつこうぎをよういします。

 その子のやる気さえあればもんだいありません。


 だがそうでない残りの生徒はちがいます。

 ほとんどの生徒がこのカテゴリーに当てはまります。

 よって悲しいかな、じゅくはこのそうにはなんの対策もたてないのが世の常なのです。


 さあ、ここで生徒の親御おやごさんの出番。

 愛する我が子の合格のため、志望する学校の過去問をみずから購入こうにゅうう

 鬼講師おにこうしとなって子供の受験する科目を解き、自分で問題の傾向けいこう対策たいさくを立てなくてはなりません。

 もちろん親御おやごさんの学力を総動員そうどういんしてであります。



 これは今の首都圏しゅとけんにおける少年少女サッカー界にもいえることです。

 ただ、親御おやごさんみずからがサッカーを教えるわけではありません。


 むかしは、

 「一に才能、二に努力、三四がなくて五に努力」

 でした、


 現在は、

 「『親の経済力けいざいりょく』がものをいう」

 事態じたいになっちゃってます。


 もしその子に才能があっても、地元のクラブに入れなければサッカーがプレーできません。

 そのうえでクラブとは別に、サッカー専門の個人インストラクターをやといます。

 そして我が子のプレーの質を上げてもらう。

 運が良ければアカデミーのアドバンストクラス。

 そのいきおいで、アカデミーのジュニアユースにいれるのが当たり前。


 ジュニアユースの選手たちの大半たいはんが、個人インストラクター経由で入っていたと、後で息子のタクから聞いたとき、パパはがく然としてしまいました。


 まさに「親ガチャ」。中学受験といっしょになっちゃいました。


 しかたありませんよね。○×Kのディレクターの子がプロサッカー選手に、その兄が俳優はいゆうになる世の中ですから。


 首都圏しゅとけん、いや日本の常識じょうしき大変革だいへんかくを起こしているようです。



 話がそれました。一文字隼人(いちもんじはやと)女子学園、通称マスクドライダー学園の過去問を購入。

 ほんとパパはイヤイヤ、今年出題された過去問を解きました。


 結果、算数88点、国語71点、理科0点(見たくもないのでこうなっちゃいました)社会92点、選択科目の英語85点。


 九割とれないなんて何しとんねん、とパパは自分にツッコミを入れたくなります。

 教えられる科目は算数、国語のみ。社会に関しては対策する時期があまりにおそすぎ。

 なぜなら、社会はまとめノートを作成する必要があるのですが、その時間がもうないからです。


 ナナは算数、国語の二科目受験だな、と腹をくくるパパでした。





 


 


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