第30話 2A教室
ザジックスの2A教室。
ザジックス若葉台校は五階建てのビルなの。
二階、三階が二科目受験の生徒用。四階、五階が四科目受験の生徒用になってる。
ちなみに一階は、事務局兼講師控え室だよ。
学力レベル別のクラスが、下からA、B、C、D、Eとなってる。
つまりAがビリ、Eがトップってなわけ。
ナナは二科目受験でAクラスだから、二階のAクラス、つまり2A教室。
なんかイヤな感じ。
2A教室に入ってじっと中を見渡してみる。
机が二十個ほどあって、教室の前には黒板にそうとうするホワイトボードがあるの。
ほとんどの生徒がすわってるんで、あいてるいちばんうしろの席に着いた。
いすにすわって、リュックサックを机に置く。一息つくと、
「ナナ、ナナちゃんじゃない」
2A教室のドアから、ナナのなまえを呼ぶ声がする。
そのままツカツカと歩きながら、こっちにやってくる一人の少女。
その子の名前は菊川メイ。小学校では同じクラスで、メイメイって呼ばれてるの。
メイメイは学年一美人で頭もすっごくいい。
ここ、ザジックス若葉台校では5E教室の生徒。そりゃとうぜんだよね。
あの光陰女学院中学校は合格まちがいなしってみんなに言われてる。
ナナとは住んでる世界がぜんぜんちがうの。
そんな彼女が何しに来たんだろう。
「ナナちゃん、おはよう」
「おはよう、メイメイ」
「ナナちゃんがここにいるってことは、もしかして中学受験するの」
ナナにちょっときびしい質問をしてくるメイメイ。
「まだよくわかんない。とりあえずパパに言われて、ここに行ってこい、ってなったの」
「そうなの。でもたいへんよね、いまから受験勉強でしょう。ちょっとかわいそう」
「うん、まあ」
なにがかわいそうよ。百メートル徒競走で、スタートからいつも転んでばかりいるメイメイのほうが、ずっとかわいそうじゃない。
そう言ってやろうと思ったけど、やっぱりやめた。
「この子だれ?」
メイメイのうしろにひかえてる取り巻き連中がやってきた。
「ナナちゃんって言うの。メイと小学校のクラスが同じで、男子たちといつもサッカーばかりやってる子」
メイメイがまた気にさわることを言ってくる。すると取り巻き連中が、
「どうりでショートカット、肌も真っ黒なんだ」
なんて言ってくるの。まあたしかにそうなんだけど、ナナちょっと腹が立ってきちゃった。
「じゃあね、ナナちゃん、がんばってね」
そう言って、取り巻き連中をしたがえながら去っていくメイメイでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます