第29話 お盆休み
八月十五日。まわりのみんなはお盆休みだよっと言って、あちこち出かけてる。
なのに、ナナはいちばん行きたくないところへ行かされるなんて、サイテイ。
パパとママに言われて朝七時に起こされる。朝食はパンと紅茶。
昼休みに食べるおべんとうをママがよういしてくれた。
それを持って八時に家を出る。
いつもとちがって、きょう、バス停『国鳥台』に立つのはユウウツだよね。
なぜって、バスに乗るって言ってもFCわかばのスクールバスじゃないから。
ああ、来ちゃった。バス停に市営バスが到着。『若葉台駅』行きなの。
それに乗って、十五分ほどゆられながらボーッとする。
まるでだれかに胃をつかまれてるかのように、おなかがキリキリ痛む。
サラリーマンのおじさんは、まいにちいったいどうなってるんだろう。
っていうか、きょうはサラリーマンのおじさんさえいないの。
いるのはメガネをかけた青白い男の子や女の子ばっか。
まだおなかがキリキリする。
リュックサックからペットボトルを取り出し、『へーいお茶』を飲んでみる。
だけど、おなかの痛みはまったくとれないの。
逆に胃のなかでお茶が、タプタプって聞こえるくらいたまってきちゃってる。
「もうイヤ」って思ったら、やっと市営バスが若葉台駅に到着。
ナナはタラップを降りる。すると目の前にドーンと背の高いビルがそびえ立つ。
いちばん上のかんばんを見ると『ZAZYX』って書いてある。
ナナと正反対で、べんきょう大々大好きって子がたくさん通ってる超有名進学塾、『ザジックス』。
入り口に入ると、職員のお姉さんから自分のカードをスキャンするように言われた。
ナナの首にかかってるカードを、スキャンする機械にかざしてみる。
「ピピッ」っていう電子音が鳴った。
これがきょう出席したっていう記録になるんだって。
さらに進んでくと、ナナはエレベータのとびらの前に立ったの。
すうーってとびらが開いたんで中に乗りこむ。
とびらのすぐ左横に、一階から五階まである丸いボタンが設置されてる。
「二階の教室よ」って、ママに前もって聞かされてたんで、ナナは二階のボタンをポチッと押してみた。
とびらが閉まったあと「ウィーン」って静かな音を立てながら、エレベータが上がってく。
そしていっしゅんグラっとゆれて二階に到着。
とびらが開いて視線を前に向けると、通路のおくに『2A』って表示された教室のドアが現れたの。
ついにナナのサイテイな一日が始まっちゃった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます