第32話 不満爆発

 昼食後の国語の授業。


 2A教室にやってきたのは女性のセンセーだったの。

 パーマをかけた茶髪ちゃぱつのヘアスタイルに赤色のフレームのメガネ。


 自己しょうかいではこのセンセー、ふだんは英語担当なんだって。

 だから自分のことを、

 「オーセンティックな国語教師じゃないからかんべんしてね」

 なんて、最初にいいわけしちゃってた。


 なに、『オーセンティック』って。

 ナナは中学生じゃないよ、小学生だよ。

 こっちが「かんべんしてよ」って言いたくなる。


 センセーはありきたりの論説文ろんせつぶん小説問題しょうせつもんだいの解き方を説明してきた。

 説明してくれたんじゃないよ。説明してきたんだよ。

 だけど、ナナは『あたまがピーマン』状態。

 「なんだかんだ、やーになって……」

 芸人が歌う歌詞かしのフレーズがあたまの中で流れてくる。


 そんな時、『デイリーチェック』つまり確認テストの時間にになっちゃったの。

 テストの内容は漢字の読み書き、ことわざ、そして慣用句かんようく


 何の準備もしてないナナには、とうていムリに決まってるじゃん。

 だからほとんど解答できなかった。


 でも、うしろの方の「空欄くうらんを埋めよ」っていう問題のひとつに『( )が勝ち』という設問があったの。


 パパの本棚ほんだなには、ひろえもんが書いた『稼ぐ《かせぐ》が勝ち』っていう本があるんだよ。


 だからナナは、設問の答えに本の題名、『(かせぐ)が勝ち』を書いておいた。

 ナナってすごいでしょう。ちゃんと漢字も書けたんだよ。


 「はい、時間終了です」

 っていう声がけで、やっとザジックスの一日目が終わっちゃった。



 塾から帰宅して夕食の時間。

 ナナは、パパやママといっしょにテーブルについてる。


 テーブルの前にはナナのだいすきなチキンカレーが用意されてた。

 だけど、食べる気がしないし、食べたくない。


 「どうしたナナ、大好物だいこうぶつのチキンカレーだよ。早く食べなさい」

 パパがナナにせまってくる。

 「おなかがキリキリして食べたくない。気持ち悪い」

 「塾でなにかあったのか」

 「あったよ、大あり。ナナは塾にぜったい行きたくない、もう塾やめたい!」

 「うーん……」


 パパはうなってる。そのときパパのスマホに着信音が鳴った。

 「はい、鈴木です。あっ、はい、いつも琢也がお世話になっております……」


 時間がたったあと、パパはスマホを切る。

 「電話、だれから?」

 ナナはパパにたずねる。

 「おっさんSCレディースU15からの電話だよ」

 意外なパパの返事に、ナナは耳を疑ったの。

 




 

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