セレクション3

第33話 ママの入力

 もう八月中旬の終わり。


 なのにあわててエントリーシートに入力しようと行動をはじめる私。 

 みなさん、はじめまして。鈴木菜那のママこと鈴木敦子(すずきのぶこ)です。


 ナナにせがまれ、ママは現在けんさく中。

 ナナが入力したからこの前は落ちた。だから今度はママがやって、とお願いされる。


 ナナが幼稚園児ようちえんじのころは小さくて、タクのそばにしがみつていたのがなつかしいわ。

 それが小学五年生になると、急に背が伸び始めた。


 いまはりっぱなお姉さま。

 するとタクに対する対抗心たいこうしんもきょくたんに。

 母親からするとドキドキハラハラの連続だけど、ずっとこのままタクとナナをおうえんしていたいわね。



 というわけで、第二回おっさんSCレディースU15のセレクションサイトにやっとこさ到着。


 名前は漢字とフリガナを入力。学年は小学六年生のボタンをクリック。

 そしてナナの生年月日、身長、体重も入力。なぜか体重を聞かれるのよね。


 さらに父親、母親両方の身長まで聞かれるなんて。

 スポーツ選手だからしょうがないのかしら。


 『主なポジション』で手が止まる。

 はて、ナナはどこのポジションなのか。


 練習試合をふくめると、私が見たところすべてのポジションを経験してるわよね。

 すこしでも合格の可能性を求めて、GKからFWまですべてのポジションにチェックを入力。 

 ちょっとよくばりかな、まあいいわよね、ナナの合格のためだから。


 さらにサッカートレセン歴を聞かれる。たしかナナは県トレセンのはず。

 そのほかに市区町村トレセン、関東トレセン、ナショナルトレセンっていうチェックもあるのよね。

 小学生でナショナルトレセンってどんな子かしら。


 住所、電話番号って、タクがアカデミー通っているんだから、分かってるはずなんだけど、念のため入力。


 さいごに同意書をプリントアウトし記入しておいてくださいって。

 こちらにも事情ってもんがあるんだけど。

 そろそろタクが中学校から帰ってくる時間だし。

 これはパパにまかせましょう。


 「パパ、入力しておいたからチェックお願いね」

 「はいはい、ママ。いまかくにんします」

 パパがしげしげとパソコン画面を見る。


 「なに、同意書どういしょに所属チーム代表者のサインが必要じゃないか。すぐにもらわないと」

 ぶつくさひとりごとを言うパパ。

 それをシメシメと見つめる私。


 以上、ナナのママ、鈴木敦子のレポートでした。




 


 


 

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