第26話 スクールバス

 練習後にスクールバスに乗って帰宅途中きたくとちゅうのナナ。

 真っ暗な夜の道路を走り抜けて行く……。


 おっさんSCレディースU15、カルディ府中アリーナ、二つとも落ちちゃった。

 ナナとしてはホントふがいない。

 あとは『ごきげんよう白金』だけになっちゃった。

 どうしよう。ナナ、ちょっとマジであせってきちゃう。


 いままで男子たちといっしょにサッカー続けてきたんだよね。

 だから女子だけのセレクションなら、心の中ではたぶん、だいじょうぶって、たかをくくってた。

 それがあまかったのかな。

 それとも女子だけのプレーに慣れてないのかな。


 そんなことはない。ただ、セレクションのレベルが高かっただけのこと。

 走力はよかったかな。ナナ、アピールはできたと思う。

 基礎的きそてきなボールテクニックはちょっとてまどったけど、まあまあ及第点きゅうだいてんはとれたよね。


 もんだいは試合形式でのボール回し。実践じっせんでの攻撃こうげき守備しゅびがイマイチだったかな。

 セレクション生チーム対スクール生チームでの試合は、まずまずだったとおもう。


 だけど、ひとつ上のアリーナチームの選手たちとの試合にはまったく歯が立たなかった。

 さらに、その試合での、いままで体験したことのないフットサル戦術にはマジで面食らっちゃった。


 すごかったなあ、あの戦術。できたらナナもあれがプレーできるようになりたい。


 でもナナ、ちょっとへこむっていうか、かなりへこむ。

 いままでとはちがって、今回はホントぜんりょくでやったのに、いい結果が出てこなかった。

 こんな絶望感ぜつぼうかん味わったの、おっさんSCレディースU15以来の二度目。ナナ、超がっかり。


 バスの窓から夜の外の景色をボーっと見てたの。すると両目のまぶたから涙が出てきそうになっちゃった。

 ヤバい、ここはなんとかこらえなきゃ。

 ゴロウと高杉君だけには、ナナが泣いてるすがたはぜったい見せられないもんね。


 二人にはバレないように手で涙をふくナナ。


 くやしいけど、ごきげんよう白金のセレクションは、カルディ府中アリーナの時以上にぜんりょくで取り組まなきゃ。


 パパやママはおうえんしてくれた分がっかりするだろうな。

 逆にタクがよろこぶ姿が目に浮かんでくる。

 タクだけにはぜったい負けたくない。こんどこそがんばらなきゃ。


 ゴロウや高杉君は、FCわかばから配られたバナナを食べながら楽しそうに雑談ざつだんしてる。

 男子はいいよね。クラブチームのセレクション落ちても中学校の部活ぶかつのサッカー部があるから。


 なぜ、ナナが行く予定の谷元中学校たにもとちゅうがっこうには女子サッカー部がないんだろう。

 いっそのことナナ、男子サッカー部に入っちゃおうかな。


 ダメダメ、それだけはぜったいムリ!


 とにかく、こんどのごきげんよう白金のセレクション、がんばらなきゃ。

 二度とタクのニヤついた顔だけは見たくないもんね。

 


 




 

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