夏期講習
第27話 夕食中
ナナはさっき家に帰ってきて夕食を食べてるさいちゅうなの。
きょうのメニューはデミグラスハンバーグ。
ナナはママといっしょに食べてる。パパは、ナナが帰ってくる前にもう食べ終わってた。
タクはまだ、おっさんSCジュニアユースの練習から帰ってきてない。
「ナナ、食事中悪いがちょっといいかな」
パパがナナに話しかけてくる。
「なに、パパ」
「こんどの『ごきげんよう白金』のセレクションのことなんだが」
「うん」
「もし合格して、中学校の授業のあと、ほぼまいにち東京へあちこちのグラウンドまで通うとなるとな」
「うん」
「ママがナナの送り迎えするのが、とってもたいへんだ」
たしかにママはたいへんだと思う。ごきげんよう白金は自前のグラウンドを持ってないからね。
「また、ナナはまだわからないかもしれないが、『白金』と言う場所とウチとでは、生活かんきょうがまったくちがうんだよ」
「どういうこと」
「向こうは文字通り『ごきげんよう』だ。ナナはしっかりした子だが、おじょうさまじゃない」
ナナはなんにも言えない。なにか悪い予感がする。
「ナナはこの前『小学生全国統一テスト』受けたはずだよな」
「うん、受けた」
「結果、受験しないグループの中ではまずまずのできだった。たしかいくつか入れるところがあったとパパは思うんだが」
「……」
ほんとなんかヤバい。
「そこでだ。女子サッカーがさかんな『一文字隼人(いちもんじはやと)女子学園』を受けてみないか」
「ナナが中学受験しろってこと?」
「そういうことよね」
ママが話をつないでくる。そしてパパは、
「『一文字隼人女子学園』はたしかそこそこの判定だった。いまから勉強したら、たぶんいけるとパパは思う」
「ナナ、やる気出ないな」
ナナは中学受験にぜったい反対。そんな急にやる気なんか出てこないもんね。
ただ、しょうらい高校受験はかならずするわけだから、いまのうちになれておいたほうがいい、ってパパが言ってくるの。
「こんどお試しで八月十五日からはじまる三日間の夏期講習会に行ってきなさい」
「……」
「FCわかばの監督さんには、許可をとってあるからだいじょうぶ」
「……ナナ、やっぱり、やる気出ないな」
なにがだいじょうぶなんだか。けっきょく無理やり夏期講習会に通わせられるはめになっちゃった。
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