第25話 練習終了後 その二

 FCわかばの練習が終了。

 湿度が七十パーセント超えてるんじゃないかと思うほど肌がベトベトする。


 ナナたちはサッカー用具を片づけはじめたの。


 「いやー参ったよ、ナナ。実力があるってつらいよな」

 意識高すぎ高杉君の口がいつになくなめらかだよね。

 「高杉君、どうやってシュート決めたの」

 ナナはあえて高杉君に聞いてみた。

 「そこ聞いちゃう?。オーケー、ナナ。オレ何分でも話しちゃうよ」

 「やめてくれ。もう聞きあきたよ」

 ゴロウがウンザリ、といった顔で話を止めようとする。


 「ゴロウ、お前からナナに話してやってくれよ。なんたってゴロウはオレのスーパープレーを見た生き証人なんだからな」

 自慢げに話をゴロウにふる高杉君。

 「またかよ、しょうがねえなあ。ハーフェーラインでボールを持った高杉がさ」

 「そうそう、どんどん言ってくれ」

 「何を思ったのかミドルシュートを打ったんだ」

 「打ったらどうなったの」

 ナナが話をふくらませる。

 「たまたまGKの手前でボールがバウンドして、イレギュラーでゴールに入っただけ」

 「『たまたま』はないだろ。オレは狙ったの、分かる?ナナ」

 高杉君、会話が絶好調だ。


 「以前、サッカーやってたホストのホーランドっていう人がテレビで言ってたよ」

 ナナが話をひろげる。

 「そいつなんて言ってた」

 ゴロウがナナにたずねる。

 「高校のセレクションで、たまたまロングシュートが入ったの。そしたらそのプレーが評価されて高校の授業料タダになったって」

 「ナナ、オレをホストといっしょにしないでくれ」

 高杉君、ちょっと不機嫌になった。


 「ところで、一次セレクション通過したのは何人くらいなんだ」

 ゴロウが高杉君にたずねる。

 「サイトで合格者番号表を見たら、ざっと十五人くらいかな」

 「兄のタクが言ってたよ。おっさんSCアカデミーの一般セレクションは五百人越えの応募の中、三次まで残ってさいごに合格したのは、一人だけだったって」

 ナナはタクの言ってた話を引き合いに出す。

 「ナナ、オレの夢をこわすようなこと言わないでくれ」

 高杉君、急に暗い顔になる。

 

 「まあ、高杉、なるようになるよ。ナナ、早いとこ片づけようぜ」

 ゴロウはそう言うと、コーンを持ち上げて倉庫に運んでいく。

 

 わたしたち三人は、スクールバスの発車時刻に間に合うよう、ふたたび後片づけの作業をはじめた。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る