第19話 リフティング

 「みなさん、スクール生とセレクション生一人ずつでペアになってください」

 クールダウンが終わったあと、ヘッドコーチの方が指示を出してきた。


 GKはGKと、そのほかのFPはスクール生とセレクション生が一人ずつペアになっていく。

 ナナはさいごに残ったスクール生とペアを組んだ。


 「ボールを配ります」

 フットサルコートのわきで準備していたスタッフ陣がボールをポンポン投げ入れてきた。

 

 ナナは自分に転がってきたボールをトラップ。そのまま軽くインステップで数回リフティング、右足うらで足元にトラップする。


 「……なんか変」


 もう一回ボールを軽くけり上げて、コートのゆかにはずませてみる。

 ナナはいつものサッカーボールとちょっとことなる点を見つけた。

 このボールはふだん使ってるサッカーボールと比べてみると、あまりはねないの。


 「では、自由にリフティングしてください」

 ヘッドコーチの指示が出た。

 ナナは、インステップキックで左右リフティングする。

 相方あいかたのスクール生も難なくこなしている。


 「アウトサイドでのリフティングもしてください」

 ナナはなんとか右足のアウトサイドで十回ほどリフティングする。

 相方あいかたの方は問題なくやってるんで、ナナはちょっとあせってきちゃった。


 「それでは、インステップとアウトサイド、こうごにリフティングしてください」

 ナナは右足のみで、インステップとアウトサイドでのリフティングを、こうごに連続三回できた。


 ところが相方を見ると、右足のアウトサイドから右足のインステップ、そのままボールを移動させ、左のインステップから左足のアウトサイドへと軽くプレー。

 これを左右こうごに何回もやっちゃってるんで、ナナはビックリ。


 「はい、次にインステップキックで軽くけり上げ、それを頭でリフティング、落ちてきたボールをももでトラップし、そのボールをふたたびインステップキックでけって、ヘディング。これをくり返しましょう」


 ナナは右足のインステップでボールをあたまの上に浮かして、そのボールをヘディング。

 落ちてきたボールをももでトラップし、そのボールをまたインステップであたまの上へと軽くけり上げる。

 この一連の動作をなんとか五回できた。


 相方あいかた視線しせんを移す。

 すると相方あいかたは先ほど指示された動作を、一回も地面に落とさず、それを何回も繰り返してる。

 さらにおどろいたのは、彼女が左右両足でもって、ピエロの曲芸きょくげいのような身のこなしで、その一連の動作をやってるってこと。


 ナナの心に不安がよぎっちゃった。

 


 

 




 


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