セレクション1

第2話 下校

 初夏しょかの午後三時。黒鳥学園こくちょうがくえん小学校のチャイムが鳴りました。


 六時限の授業がおわったので、生徒はつくえをうしろにうごかします。

 さらにモップで教室のゆかをふいていくの。

 つくえをもとの位置にもどして黒板を黒板消しできれいに。

 さいごにクリーナーで黒板消しのくずをすいとります。


 やっとのことで教室のそうじが終わっちゃった。

 私の名前は鈴木菜那(すずきなな、通称ナナ)、小学六年生。

 ナナはライトブルーのランドセルを背おって校舎こうしゃの二階から一階へとかいだんをかけおります。


 今は女子でも赤色でないランドセルを持つことが増えてきたんだよ。

 ちょっと前に、校舎こうしゃのかいだんでランドセルを背おった男のひとのタレントが、これまたランドセルを背おった女性のタレントと、コントじみた演技のCMがながれてたの覚えてる?


 でも実際の小学生生活はかなりちがうの。

 授業が終わると、習い事でしずかに学校を去る子。

 または中学受験ちゅうがくじゅけん進学塾しんがくじゅくへ通うため校舎前こうしゃまえにとめてある車に飛びのる子。

 たったこのふたつだけ。

 ナナは最初のほうかな。


 高台たかだいにある黒鳥学園こくちょうがくえん小学校を出て半円形はんえんけい坂道さかみちを下り、交差点ちかくの信号機を待ちます。

 小学校の下り坂を東ととらえると、ナナが住むマンションは信号機をはさんで西側にあるの。

 そして南北には黒鳥学園こくちょうがくえん通りが走ってるんだよ。

 北へすすむと、若葉台駅わかばだいえき、逆に南へすすむと八日市場駅ようかいちばえき、という位置かんけいです。


 歩行者せんようの信号機が赤から青へと変わりました。


 ナナは横断歩道おうだんほどうをダッシュでわたると、すぐ手前にあるマンションのエレベータに飛びのるの。


 すぐさまボタンを押して四階へ。

 そこに到着とうちゃくすると405号室へ向かいチャイムをならしたんだよ。


 「はあーい」


 とナナの母親、鈴木敦子(すずきのぶこ)がげんかんを開けてくれました。

 「ただいま、ママ。すぐ行ってくる」

 「行ってらっしゃい、車に気をつけてね」


 ママの声を背に受けてナナは、ランドセルからすでに用意しておいたサッカー用具のはいったリュックに持ちかえる。


 そのまま四階から一階まで一気にかいだんをかけおります。

 そして黒鳥学園通こくちょうがくえんどおりのすぐそこにあるバス停『国鳥台こくちょうだい』に立ち止まったの。



 

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