第3話 バス停
いま、ナナはこのバス停『黒鳥台』に立ち寄る『FCわかば』のスクールバスを待ってます。
二歳年上の兄、鈴木琢也(すずきたくや、通称タク)が幼稚園ふぞくのサッカークラブFCわかばにかよってたんだ。
そのすがたを見てきたナナは、タクに負けじと同じ幼稚園の年中からFCわかばにかよいはじめたの。
そして小学六年生。いまでもかよい続けてる。
ひたすら兄、タクに負けてたまるかという思いで。
なぜそう思うのか、って言われてもナナにもわかんない。
ただ現在タクが在籍してるおっさんSCアカデミーに負けじと、ナナもどこかの女子アカデミーに入りたいと思ってるだけ。
とにかく、タクだけには負けたくないんだよね。
「よっ、ナナ。んん?なんかこわい顔してるな」
FCわかばのチームメイト、山田吾郎(やまだごろう、通称ゴロウ)が声をかけてきた。
ゴロウとは幼稚園からの幼なじみでありナナと同じくらい背が高い。だいたい、百六十センチこえてるかな。男子だとそうでもないか。
周りの人には、とりあえず二人でスポーツウェアのモデルやれるな、っていわれるけどどうだか。
「ゴロウ、どうしたのそれ」
ゴロウの右手を見た。手もとにあみの中に入った真新しいサッカーボールを持ってる。
「いや、親にねだって買ってもらったんだ」
「派手な色だよね」
「そう、そこがポイント。ナナとちがってオレのレギュラーはヤバいから。ボールでもってアピールしなきゃな」
確かにわからないでもない、ただボールだけ目立ってどうなの。
「ところでナナ、中学はサッカーどうすんだ。どっかの女子チームにでも行くのか」
「とりあえずいくつかの受けようと思ってる」
「なるほどね。兄貴のタクさんがいるからそうなるよな」
「タクとは関係ない」
「悪い悪い、でもナナはすぐ顔に出るな」
ナナは無視する。
「ゴロウはどうすんの」
こんどはナナがゴロウに切り返す。
「そう、そこなんだよな。まわりには言えないけど、じつはおっさんSCアカデミー受けようと思ったりして」
「そうなの」
「やっぱ、タクさんにあこがれるもんな」
「ふーん」
「みんなには言うなよ。シャレになんないから」
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