第5話 練習終了後

 FCわかばでの練習後、私、ナナはチームメイトといっしょに用具の片づけをしているところだった。


 「そんでもって、ナナがオレからいきなりボール取り上げてさあ」

 ゴロウがチームメイトにバス停『国鳥台』での場面をはなしはじめる。


 「ビシッと右足のインステップでベビーカーめがけてボールをけったんだ」

 「なんだよゴロウがけったんじゃないのかよ」

 FCわかばのチームメイトの一人、意識高すぎの高杉君がちゃちゃを入れてきた。


 「そんなのオレには無理って知ってるだろ。オレはただのたたみだよ、タ・タ・ミ」

 「分かってるって。そんでもって、ベビーカーはどうなったんだ」

 高杉君がはなしをふくらます。


 「ボールがベビーカーの前輪にうまく当たったの。なんとかトラックとのしょうとつだけはさけられたんだ」

 ナナはちょっと、じまんげにこたえる。

 「さすがナナ、他人のボールで人助けってわけか」

 「なにそれ、高杉君。ナナにケンカ売ってるの」

 「まあ、まあ、まあ。ところでナナ、カルディ府中アリーナのセレクション受けんのかよ」

 「どうしようか、なやんでるの」


 「あれ、おっさんSCレディースU15を受けるんだろ」

 ゴロウがナナにツッコミを入れる。

 「いくつ受けるかわたしの勝手でしょ。ゴロウはおっさんSCアカデミーだよね」

 「おい、ナナ言うなって」

 「ゴロウ、大きく出たな。いっしょにケチツウFCアカデミーとおっさんSCアカデミー両方受けに行くか」

 おっ、高杉君も大きく出たな。

 「高杉といっしょに受けたら、受かるもんも受かんねーよ」

 ゴロウの意見はたしかにそうかも。

 「そう言うなって、ゴロウ。はやいとこ用具、片づけようぜ」

 高杉君はナナたちと片づけの作業を続ける。


 「ところで、ナナ、ゴロウのボールはどうするんだ?、痛っ!」

 ナナは思わず高杉君の足をふみつけてた。高杉君はびっくりした表情をしてる。まっ、そりゃそうだよね。

 「はやく片づけて帰ろ、ね、ゴロウ」

 そう言いながら、ナナはゴロウの顔色をうかがってみる。

 ゴロウはぶすっとして、だまったままだった。



 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る