第21話 ゲーム形式 その一

 「それではゲームをはじめます」

 ヘッドコーチの指示でフットサルのゲーム、スクール生対セレクション生の試合がはじまった。


 フットサルは五人制なの。GK一人とFP四人。そのFP四人がいろいろなフォーメーションをくり出しながらプレーするんだ。

 ほんとはフットサル特有のポジション用語があるんだけど、ここでは便宜的べんぎてきにサッカー用語で説明するよ。

 両チームともに一人のDF、左右のMF、ワントップのFWというダイヤモンド型のフォーメーション。

 ナナは一番うしろのDFで、セレクション生チームの守備をまかされる。



 はじめにしかけてきたのはスクール生チームだった。

 相手の左右のMFとDFがパスこうかんをしている中、そのDFがいきなりFWにくさびのたてパスを入れてくる。

 

 FWは足うらでボールをトラップ。

 するとパスしたDFが、もう然とかけ上がってきて、FWの足うらによる落としのパスをトウキック(つま先のキック)でシュート!

 これをセレクション生チームのGKが、なんとか止める。

 その味方GKはナナにボールをパスしてきた。


 ナナは、以前、動画サイトのフットサルの映像で見たワンプレーをやってみようと。こころみる。


 まず左MFにパスしてボールをあずけた。

 そのままナナは前方に上がり、数歩進んだところで左足を踏みこんでバックステップする。


 いわゆるフェイクしながらのバックステップだよね。

 この左足が大事。右方向にバックステップしたいなら左足で、左方向にバックステップしたいなら右足で踏みこむのがポイント。


 右方向にバックステップしたナナの考えを分かってくれたのか、ボールをあずけていた左MFは、すぐナナの足元にパスしてきた。


 ナナは左足の足うらでトラップ。

 そのまま右ななめ前方にボールを押し出し、すばやく右足のトウキックでシュート!


 「ゴール!」 


 一点取ったよ。

 ナナは左MFとハイタッチしながら自分のポジションにもどっていく。

 その後、数分たってゲームは終了。

 一対0でセレクション生チームが勝った。



 「いまから名前を呼ばれる人は、二階のコートへ上がってください」

 ヘッドコーチがセレクション生のGKとナナ、あと三人のスクール生、あわせて五人の名前を呼んだ。


 名前を呼ばれたその五人は、一階から二階のフットサルコートへと階段を上がっていく。


 二階に上がったナナは、コート内に目を向ける。

 そこには、十人ほどのカルディ府中アリーナの女子選手たちが真っ青なユニフォームを身にまとい立っていたの。


 

 その中に見覚えのある女子プレーヤーがいる。

 ひときわ背が高くて眼光がんこうがとてもするどく、まるでオーラを放ってるかのような存在感そんざいかんのある選手。

 そう、その人は、タクが所属してたFCわかばのライバルチーム、FCカサンドラの紅一点こういってん、黒鉄サキ(くろがねサキ)さんだった。


 

 

 


 

 



 


 

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