第10話 呼び出し音

 おっさんSCレディースU15のセレクションから次の日の月曜日。

 ナナは午後四時頃に黒鳥学園小学校から帰ってきた。


 きょう、FCわかばの練習は休み。パパは書斎でノートパソコンとにらめっこ。

 ママは夕食のしたくでスーパーへ買い物に行ってる。


 きのうのセレクションの結果は、もし合格だとパパのスマホにメールが来る。

 不合格だと何のれんらくもなしって決まってるの。


 だからパパのスマホがテーブルの上に置かれてる。

 それをナナはじっと見つめてる。

 けど、ただテーブルに置かれてるだけ。スマホは今のところぜんぜん動かない。


 あまりにひまなので、ナナはパパやタクと時々する『シャイニングイレブン』をやることにした。


 シャイニングイレブンはテレビのサッカーゲームのこと。

 女の子なのにすごいね、ってよく言われるけど、ナナの家では当たり前の光景なんだよ。

 パパやタクと戦うけど、特にタクとの対戦には気合いが入る。


 パパは、ナナが小さい頃からこのシャイニングイレブンで、サッカーのフォーメーションや戦術を教えてくれたの。

 って言うよりは、たたき込まれちゃったのかな。

 それらを使ってタクと対戦するんだ。


 タクに言わせると、ナナは口が悪いらしい。

 タクと対戦してて、ナナがそうさしてる選手がプレーをミスると、

 「へたくそ!」

 って口走っちゃう。それを何回も。

 タクは、こわいこわいって言ってる。

 ナナはゲームに集中してて、ちっとも気づかないんだけどね。


 そのタクは中学校からまだ帰ってきてない。

 おっさんSCジュニアユースもきょうは休み。

 なのでタクは帰ってきたら、こべつしどう塾へ行く予定みたい。


 だからナナは、シャイニングイレブンのコンピュータと対戦することに。

 お気に入りの選手を並べてさあ始めよって時に、電話の呼び出し音がなる。

 スマホのそれじゃない。

 固定電話のだ。

 ナナはその受話器を取る。


 「もしもし、鈴木ですがどなたですか」

 「あ、ナナ。私、分かる? すずめです」

 チュンチュンからの電話だった。


 



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る