第27話


 オークキングを倒してからすぐ、俺はギルドマスターから呼び出しを受けた。

 兵站の依頼なのに魔物と戦ったことをとがめられるのかと思ったが、どうやらそうではなかったらしく。


「というわけで、今日からお前はCランク冒険者だ。ギルドマスター権限だとここまで限界だった、スマンな」


 俺はオークジェネラルやオークハーミット、そしてオークキングを討伐した功績で、あっという間にCランクに上がってしまった。

 こんなことならさっさと魔物を狩っておけば良かった……とちょっとだけ思ってしまったのは内緒だ。


 今回の指名依頼の報酬と、売りに出す各種オーク達の素材分の売却額を合わせると、既に兄さんからもらった餞別の額を超えてしまった。


 これでひとまず、しばらくの間は何もしなくてもいいくらいに金が溜まった。

 なので俺はじゃんじゃん討伐依頼も受け……たりはせず、スキルの習熟に努めることにした。


 あのオークキング率いるオーク群との戦いは、今思うと色々と反省点が多い。


 召喚獣を散らせてもっと広範囲に冒険者達の支援をすることもできたはずだし、戦いに集中しすぎていたせいで周りはがおろそかになりすぎていた。

 無詠唱魔法を始めとして色々と魔法を見せすぎたのもある。


 そのおかげで色々と面倒なことにもなってきている。ギルドに行かずに宿で魔法の練習をしているのは、ほとぼりが冷めるのを待っているという側面もあった。


 俺は純粋な戦闘能力なら高いのかもしれないが、それ以外の経験値が足りない。


 あんまり人と関わってこなかったせいで、コミュニケーション能力も露骨に落ちてきている気がする。

 ちなみにあれから二週間ほどが経ち、今の俺のステータスはこんな感じになっている。




マルト・フォン・リッカー


レベル42


攻撃C(A)

防御C

魔攻B

魔防D

俊敏C


スキル魔法 レベル2

元素魔術 レベル6

系統外魔術 レベル6

上位鑑定 レベル3

剣豪 レベル5

不撓不屈 レベル5

全耐性 レベル4

暗殺者 レベル7

万物知覚 レベル5

与ダメージ回復 レベル3


呪術 レベル5

封印術 レベル6

双剣術 レベル6

槍術 レベル5

投擲術 レベル10(MAX)

夜目 レベル10(MAX)

マジックバリア レベル2

物理障壁 レベル2

言語理解 レベル10(MAX)

祈祷 レベル2



 戦闘と訓練によって、上位スキルのレベルが軒並み上がっている。

 一の実戦は百の訓練に勝ると言うが、オークキングと戦ったおかげで各種スキルレベルは一気に上がった。


 ここ三週間の成果で言うと、上位鑑定のレベルが上がったおかげで、自身のステータスを確認することができるようになった。


 あと、直近の変化で一番大きかったのは、やはり系統外魔術のレベルアップだ。

 こいつのおかげで、俺は召喚魔術の真の力を知ることができた。


 系統外魔術がレベル6に上がったことで手に入った、召喚魔術のホルダー。

 これこそが召喚魔術の真骨頂(ただし俺にとって)だったのである。


 この魔法は一度発動させると、召喚獣をカード化してホルダーに保管することができるようになる(ちなみにホルダーに入れている状態でも召喚されている扱いになるため、召喚獣の枠は使用する)。


 そこに入れた召喚獣に応じて、俺の基礎能力値が上がるのだ。

 攻撃の後ろにある(A)というのは、補正値込みでA程度の力があるということになる。


 たとえばゴーレムを入れると攻撃力増大(小)がつくようになり、ミニリザードを入れると火魔法(小)がつくといった感じで。


 そして召喚魔獣で生み出せる合成魔獣をカード化した場合、補正が(中)へとグレードアップしていた。


 恐らく魔術を使う召喚士本体のステータスの弱さを補うための魔法なのだろうが、これを使えば俺の能力値は一気に上がる。


 ぶっちゃけ既に各種スキルを取って高い基礎能力値を持っているであろう俺は、召喚獣と一緒に戦うより補正を乗せて一人で戦った方が強い。


 なので俺にとって召喚魔術は召喚獣で戦うものではなく、召喚獣によって能力に補正をかけてぶん殴るスキルだという形で落ち着いた。


 ちなみに補正値を見ればわかる通り、今の俺は全てをゴーレム系統の召喚獣で埋めることで完全な脳筋ビルドを作りあげ、既にA相当の攻撃力を手に入れている。


 これがどのくらいの力かと言うと……思いっきり握ると石が割れる程度の力だ。

 自分でやってびっくりしたよね、うん。


 純粋な比較はできないけど、少なくとも補正なしと比べると倍近いくらい握力が上がってると思う。

 補正の値はさほど大きくないだろうから、多分レベルが上がりまくると誤差程度にはなってきたりするんだと思うけど……少なくとも今はかなり有用な力だ。


 この世界の強者って、どんくらい強いんだろう。

 上位鑑定のレベルを10まで上げたら、フェリスのステータスも覗けるようになるんだろうか。


 ちなみに現在、スキルポットに魔力もチャージ中だ。

 とあるスキルを手に入れるために、余った魔力はそこにぶち込んでいる。


 ホルダーで上がった力でどこまで行けるか試してみたいし、そろそろギルドに行ってレベル上げを再開するか……なんていう風に考えていた頃、俺が止まっている宿に来客があった。


「マルト、ちょっといいかしら?」


 やってきたのは、『左傾の天秤』の魔法使いのミラだった。

 一体、何の用だろうか?

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