第22話


レベルが一気に上がったからか、妙に身体が軽い。

 今までレベルは鍛錬の末に一つ一つ上がってたからいまいち気付きにくかったけど……レベルが上がると、こんなに違うものなんだ。


 森の中へ入ってくると、そこでは既に激闘が繰り広げられていた。


「ブモオオッッ!!」


「ちいっ、合わせろリン! 一、二――三ッ」


「ファイアストリーク!」


「紅蓮斬!」


 オークソルジャーと思しき周りにいるオークより大きな個体と戦っている冒険者パーティー。

 周囲のオーク達からの攻撃を避けながら上手い位置取りを続け、有利に戦いを続けている。


 あれはたしか……Dランクパーティーの『紅蓮一閃』だったっけ。

 さすがベテランなだけのことはあり、めちゃくちゃ安定してるな。


 あ、でも後ろからオークメイジが魔法を放とうとしてる。

 とりあえず、助太刀させてもらおう。


「シッ!」


 暗殺者スキルを使ったまま剣を横に薙ぐと、勢いよく首が飛んでいく。

 相変わらずえげつない切れ味だ。

 首は『紅蓮一閃』の手前に転がっていった。


「なっ、今のは……? 奇襲だ! 後方からオークが来るぞ!」


 突然オークメイジの首が飛んできてびっくりしたらしいけど、すぐに再び動き出していた。 よし、これで問題なしっと。


 そのまま少し遠回りになっても良いので、苦戦する冒険者達に手助けをしながらこの遠征の責任者であるBランク冒険者の下へと向かっていく。


 レベル上げにもなって人助けにもなるのだ、やらない理由がない。


「なっ、傷が……治ってく!?」


「オークが突然火だるまになりやがった! よくわからんけどチャンスだ!」


 首が飛ばしたり魔法でオークを倒したり、怪我を負って復帰できなそうな重傷者を治していく。


 系統外魔術に組み込まれた光魔術のスキルは、既に大抵の傷は治すことができる。


 俺の場合筋肉や骨に関しても具体的なイメージができるおかげか、骨が飛び出るような骨折や複雑骨折であっても問題なく治療することが可能だ。


 場所によってはかなり劣勢なパーティー達も多くいたが、俺が回復させて戦線復帰させてから魔法を使ってオークを殲滅させてやるとなんとか持ち直し始めた。


 レベルを更に少しだけ上げながら、戦いながらの魔力の消費量についての感覚値を身体に叩き込んでいく。


 与ダメージ回復の効果を試してみたんだが、どうやら低級の魔法を使った程度の魔力であれば、しっかり攻撃を当てることができればほとんど魔力を消費することなく使うことができそうだ。


 ただ範囲攻撃ができるくらいの魔法だと、かなり大量の敵に当てないと元本回収はできなそうだ。

 光魔法で使った魔力分も回収できたら……と思ったんだけど、流石にそこまで上手くはいかないか。


 討伐が許されるくらいランクが高ければ、この辺りのもう少し詳細なデータが取れてたんだけど、とりあえず感覚値と実戦値でやっていくしかない。


(暗殺者スキル……かなり強力だな)


 暗殺者スキルを使い気配を消すと、少なくともオークソルジャーやオークメイジ達にも気取られず接近することができる。


 接近をしたら、母さんの愛剣を使ってバッサリという凶悪コンボを使えば、今のところどのオークも一撃で処理できている。


 間違いなくこの先に待っているであろうオークキングには通用しないだろうが、雑魚狩りとしてはかなり強い。


 正直いくらでも悪用ができる力な気がするので、取り締まろうとする国の偉い人の気持ちも少しわかる。


 と、そんなことを考えているうちに一際強い反応が集中しているエリアにやってきた。


 まだかなり距離があるはずだけど既に辺りの樹が至る所で倒壊しており、この先で行われている戦闘の激しさが窺える。


「……うん、出し惜しみはナシって決めたんだ。全力で行こう」


 下手に手のうちを隠していて死んだりしたら意味がないからね。


 俺は召喚魔法を発動させ、召喚獣を呼び出すことにした。

 召喚魔法が系統外魔術へと組み込まれ召喚魔術として進化したことで、新たな境地へとたどり着いた。


 まず以前の召喚魔法の効果は受け継いでいる。


 レベルを10まで上げたことで、10種類の魔物を合わせて100体まで召喚することが可能だ。


 そして魔術になったことで、更にその先もある。

 新たに入った力の名は、その名も召喚獣合成。


 その名の通り、魔物を合成して新たな魔物を生み出すことのできる能力である。


 召喚魔術においては、召喚魔法とは別枠で合成した召喚獣をレベル分召喚することができる。

 系統外魔術のレベルが3になった今は、3体の合成召喚獣の使役が可能となっている。


 合成の仕方は簡単で、召喚魔法で出したモンスターを召喚魔術で合わせるだけだ。


 召喚魔法の頃に召喚ができていたモンスターは10種類。



スライム

エアバード

ファイアレオ

ハウンドドッグ

シーホース

スケルトン

ゴーレム

レイス

マッドフィッシュ

ミニリザード



 これらに合成の力を使い掛け合わせて、既に魔物は生み出している。

 何度も使って試している最中のためこちらも最適とは言いがたいけれど、とりあえず今出せる中で強力な魔物を呼び出すことにした。


 無詠唱で召喚獣を呼び出すサモンの魔法を使うと、三種類の異なる魔法陣が俺の周囲を囲むように生まれる。


「ウゴゴ……」


「シャーッ!」


 俺が呼び出したのは土魔法を使えるマッドゴーレム、火魔法を使えるファイアリザード、そしてレイスの物理無効特性を持つリザードゴーストだ。


 レベル10になってから解放される魔物だったため、合成せずに出せる召喚獣の中ではミニリザードの強さが頭一つ抜けている。

 なので必然とミニリザードを使った魔物が多くなっている。


「よし、ちょっとおとなしくしてね」


 召喚獣達に付与魔法をかけていく。

 身体強化に集中強化、各種耐性付与をかけていく。


 召喚獣は意思疎通ができるほどに高い知能を持っているわけではないが、とりあえず俺の言うことには従順に従ってくれる。


 合成召喚獣であれば一応オーク程度であれば倒せるだろうから、いざという時に他のオーク達を足止めすることができるはずだ。


 最後に自分にもしっかりと付与魔法をかけてから前に出る。

 するとそこには――



「真空突き!」


「ヴォーパルソード!」


「爆裂拳!」


 武技を使いながら高威力の一撃を放つ複数のBランク冒険者パーティー達と、


「GRAAAAAAAA!」


 それを正面から受け止めている巨大なオークの姿があった――。

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