第23話
そこにいるオークの数は合わせて五。
その内四体は通りがけに目にしていた、オークソルジャーよりはるかに巨大なオークジェネラル。
更に彼らを率い冒険者パーティーと直接切り結んでいる一際巨体なオーク……恐らくあれが、オークキングだろう。
オークキングと名付けられているものの、別に頭に王冠を被ったりしているわけではない。
けれどその身体からは、俺ですら思わず気圧されそうになる迫力があった。
傷だらけの全身と、猛々しい牙。
俺が今まであった中で、間違いなくフェリスの次に強い相手だ。
それらに対して戦っている冒険者パーティーは合わせて三つ。
事前の説明で聞いていたが、恐らく一つがCランクで残る二つがBランクパーティーだ。
(あれがBランク冒険者か……)
光の強さを見れば、どれほどの力を持っているかというのは大体あたりをつけることができる。
Bランク冒険者の一人一人の光の強さは、オークソルジャーにも劣っていた。
けれど彼らはたしかにオークジェネラル達の攻撃を上手くいなしながら、オークキング相手に善戦を続けている。
この世界においては、強さは総合的なものだ。
誰しもがスキルと魔法・武技を組み合わせることで、レベルによる純粋な基礎能力値の高さだけでははるかに及ばない敵を相手にも戦えるポテンシャルを秘めているのである。
「マジックアーツ」
「サクセッション!」
ナックルダスターをつけた男の拳が炎を纏い、槍使いの槍が分裂しながら襲いかかる。
槍術と拳術を極めていない俺の知らない武技だ。
前者は剣に魔法を纏わせる魔法剣に似ており、後者は三連撃をほとんど同じタイミングで放つことができる武技である三段突きに似ている。
武技というのは、各種近接戦闘において発動できる魔力を使って放つ技の総称だ。
魔法使いが魔法を使って攻撃を行うように、剣士や槍使い達は武技を使って攻撃を叩きつける。
この世界には武技があるため、前世ではありえなかった拳闘士などの戦闘スタイルも普通に存在している。
「ファイアアローレイン!」
「我が意に従え、ウォーターウィップ!」
魔法の使い手達も恐らく魔法系のスキルはカンストしており、魔術の域に達している者達も多数見られていた。
詠唱短縮だけではなく、詠唱破棄をしている者もいる。
皆、かなりの実力者達だ。
けれどその中で明らかにキツそうにしているパーティーがあった。
「ぐおおっ!?」
「我が意に従い味方を癒やせ、癒やしの光――ヒール!」
三組の中で唯一のCランクパーティーである『麗しの灯籠』だ。
彼らだけ明らかに、戦いについていくことができていない。
傷つきながらなんとか魔法やポーションを使ってだましだまし戦っているが、ジリ貧なのは傍から見ても明らかだった。
(流石にCランクじゃ、オークジェネラルの相手は厳しいってことなんだろうな)
助けるべきは『麗しの灯籠』だと、俺は冷静に状況を俯瞰しながら、彼らの裏側に回っている。
ちなみに最大限不意打ちが利くよう、召喚獣達は少し離れたところに待機させている。
相対しているオークジェネラルは余裕そうな顔をしており、いたぶるのを楽しんでいるように見える。
そんな風に舐めプをしてると……命取りになるぞ!
「プギイイイッッ!?」
背後に回った俺は、オークジェネラルの首を掻ききる。
流石と言うべきか、さすがに一撃で首を切り離すことはできなかったが、それでも致命傷を与えるくらいは余裕だった。
逆側からもいちげきを入れると今度こそ首が吹っ飛んでいく。
「他の冒険者達のところに援護を!」
「――ちっ、ああ、わかったよ!」
流石に命のやりとりをしている最中では喧嘩をする気はないからか、『麗しの灯籠』はそのまま後退し始める。
多分だけど、俺のことを応援にやってきた冒険者だと勘違いしたんだろうな。
その間にこちらに気付いたオークジェネラル三体がこちらに注意を向ける。
ちなみにその奥にいるオークキングは、最初から俺の存在に気付いていた。
できれば奇襲で片をつけたかったが、そう上手くはいかないようだ。
「とりあえず連携して、オークジェネラルを止めてくれ! 俺は――あいつとやる!」
召喚獣達を散開させながら、俺はオークキングの方へと向かっていく。
オークキングは今もなお戦っている冒険者パーティーではなく、こちらに視線を向けていた。
多分だけど……感知系のスキルか何かを持ってるんだろう。
明らかに俺の方を警戒している。
「ぐふっ!?」
Bランク冒険者パーティーのうちの一つ『双翼の連理』のメンバーがオークキングの一撃を食らい吹っ飛んでいく。
その合間を縫う形で、オークキングがこちらに向かってきた!
ちっ、こいつ……速いッ!
「GOOOOOOO!」
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