ヘイトの嵐

　新井美里は高校生のとき、父親から在日韓国人であることを告げられた。母親は日本人なのでハーフということになる。迷わず日本国籍を選択した美里だったが、それからは自らの素性を隠す日々が続いていた。
　大学を卒業し、外務省に入ると、ヘイトクライム対策機構という組織への出向を命じら
れる。新大久保のコリアタウンを中心に、おもに韓国人からよせられるトラブルを解決するのが仕事だ。職員は実質、韓国文化の専門家であるアドバイザーの渋谷と美里しかいない小規模組織だった。やっていることも、外国人相手のお悩み相談のようなものだった。ある日、食堂を経営する韓国人女性から、嫌韓日本人の仕業だと思われる落書きの相談をうけた。
　一方、刑事の川嶋英吾は、ヘイト動画により発生した傷害事件を追っていた。韓国人への誹謗中傷をお…続きを読む