5.闇が深いようです
このデスナーさん、本当に顔色が悪い。悪いを通り越して真っ青だよ! いや、元々が青色の肌なのかもしれない。偏見はいけないね。
「ご説明の前に、クート様のカードをお作りしなければなりません。こちらに手を載せてもらえますかな」
「カードって誰でも作れるんですか?」
「いえ、限られたお客様のみですな」
限られたお客さま。あのスキルみたいなものを持った人のことだろうね。
カウンターの上に、手のひらサイズのタブレットのようなものが置かれた。載せればいいのかな? はいっとな。
「ほう。クート様はなかなか愉快なお方のようですな。案内業務五百三十八年勤務の私ですら、このような奇妙奇天烈の情報は初めて見ました」
「何かおかしな点でもありました? 手を載せただけで何もわからないんですけど?」
「おっと、これは失礼。こちらがクート様のカードに読み込まれたデータでございます」
目の前に透明なディスプレイが現れた。
「このカードにはクート様のお名前と出身世界、文明値、ブラックマーケット内通貨、貢献度、優遇措置称号が記憶されます。クート様の名前と出身世界を見ていただけますかな」
「二つありますね」
「そーなんです。本来は人ひとりに付き出身世界は一つなのが常識。それがクート様には二つの世界と繋がりがあり。それにお名前も二つあります。奇奇怪怪、異常ですな」
何気にこの人俺をディスってるよね?
「何か問題でもあるのですか? それと、この文明値ってなんでしょう?」
「問題は……ないと思われます。後ほど確認してまいりましょう。文明値についてはこれからご説明いたします」
ということで、デスナーさんからカードについての説明を聞いた。
ブラックマーケット内では独自の通貨しか使用できない。この両替所で自分の世界の通貨をブラックマーケット内通貨『G』に変える必要がある。為替相場があるらしく円⇔Gは150円⇔100Gだそうだ。相場なので交換比率が変動することがあるが、ここ百年変化はないそうだ。
文明値はその世界の発展度を示すもので、その出身世界の文明値によっては、購入できない品が出てくる。なんでも買えるわけではないようだね。
「クート様は原始人に原子破壊銃を持たせたいと思いますかな?」
なるほどね。そんなことをしたら、ジェノサイドまっしぐらかも。
「ですので、文明値により一定の制限が課せられるのですな」
文明値は十段階あり、地球の文明値六は宇宙進出レベル。一度でも人類が宇宙に出て帰還した文明に与えられる。
マヤリスの文明値四は国集合体レベル。その世界の単一星単位で、人々が多くの国レベルでの生活を行っている文明に与えられる。
ちなみに文明値五は技術発展レベルで、何かしらの突出した技術が発展した文明に与えられる。地球で例えるなら電気らしい。唯一地球人が制御できるエネルギーだね。
「間違えていけないことは、この文明値は個人に付随するものということです。同じ世界に住む者でも住む環境によっては文明値に差が出ますな」
それも納得だ。アマゾンに住む原住民と日本人が同じ文明値かといわれれば否だろう。
ブラックマーケット貢献度は読んで字の如く、俺がこのブラックマーケットに対してどれだけ貢献したかの値。この貢献度が高いと先ほどの文明値で課せられる制限が緩くなる。
「貢献度ってどうやって上げるんですか?」
「別に難しいことではありませんな。普通に売り買いしていただければ徐々に上がっていきますな」
なるほど。だがここでニつの疑問が浮かぶ。
「ブラックマーケットへの貢献度はわかりますが、誰に対しての貢献度なのでしょうか?」
「おやおや、クート様はなかなかに慎重なお方のようですな。これまでのお話でそこまでお考えになるとは」
意味深な笑いを浮かべるデスナーさん。誤魔化す気かな?
「魔界におられる神々ですな」
誤魔化すどころか、直球で来やがった。それも、魔界の神々ときたか……。それって邪神じゃねぇの? それに、中間をすっ飛ばしたようだけど?
「魔王ではなく神々?」
「矮小な魔王如きでは、このような御業を成し得ませんな」
そうなんですか……。魔王は矮小ですか……。
「その神々はなんのために、このブラックマーケットを作ったのでしょうか?」
「暇つぶしとほかの神々に対する嫌がらせですな」
神といっても千差万別。大きく分ければ秩序と正義を重んじる神、自由と混沌を重んじる神になるらしい。邪神などという呼び方は、人それぞれの見方によって変わるので意味がないそうだ。
多くの世界は秩序と正義を重んじる神が管理しているため、自由と混沌を重んじる神は暇をしている。なので、秩序と正義を重んじる神の目を盗んで、このすべての世界に繋がるブラックマーケットを創った。各世界に干渉して世界に流動をもたらしているというのが主張らしい。
そのせいで、戦争などが起き、多くの人が死んでもそれは自由と混沌を重んじる神々からすれば、エンターテイメントの一つにすぎないということだ。
なるほど、ぶっちゃけたんなる嫌がらせだね。
それにしても、ブラックマーケットだけに闇が深けぇなぁ……。
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