132.美紅が主役のようです

 リング中央で両者が睨み合い。


 美紅は不敵というか相手を蔑んだ冷笑を浮かべ、相手のイケオヤジは苦々しい表情で美紅を睨んでいる。そりゃそうだ、完全に美紅の添え物と化している。


 注目はされている。これ以上にないほどイケオヤジも注目されている。おそらく、今後これ以上注目されることはないほど、注目されていることだろう


 美紅の相手として。


 選手紹介の冊子を見る限りこの美紅の相手のジャズさん、そこそこ有名人っぽい。


「なぁ、ファイン。このジャズさんって有名なの?」


「そうっすね。今回の天祐十傑の優良候補っすね」


「そうなん? ルナはこの予選グループにたいした相手はいないって言ってたよな?」


「本気を出していなかったということよ。妾が気をかけるほどの力を出さずとも勝ち上がってきたということであろう。ならば、美紅も楽しめよう」


 このジャズさん、前回天祐十傑神選でも決勝に進出している強者。最終日に不慮の事故があり敗退。それさえなければ天祐十傑になれていたと言われている人みたいだ。まあ、運も実力の内ってやつだね。


 ハンターギルドでは『牙狩り』の二つ名持ちで有名。大剣使いで31歳。数年前にハンターギルドの受付嬢を嫁さんにゲット。『』の異名も持つ二児のパパだそうだ。


 ははは、大輪斬りって……。奥さん、相当な美人受付嬢だったんだね。



 審判のルール説明が終わり審判がリングから離れる。美紅とジャズさんがリング上で睨み合いが続きお互いに闘志がヒートアップ。いや、美紅はフリだな。悪役ムーブ全開なのだろう。


 逆に、会場は徐々に静寂の中に包まれていく。そして、完全に音が消えたところで、試合開始の鐘が鳴らされる。


 仕掛けたのはジャズさん。


 大剣での鋭い突きを放ち美紅が紙一重で躱したところで、美紅が躱したほうへ大剣を薙ぐ。力技だ。


 大剣に扇子を当てて大剣の威力に身を任せ後方に飛ぶ美紅。しかし、その美紅の後ろをリングから伸びてきた石柱が美紅を襲う。


「美紅ねぇ!?」


「ちぃ~!?」



 会場から悲鳴が上がり万事休すかと思われたが、美紅は石柱に片手を置き後方宙返りで躱してみせる。


「ふぅ~。ヒヤッとしたね」


「美紅なら余裕だよ?」


「だとしても、なかなかの攻防よ。あの男、間違いなく決めにきていた」


 長引かせて美紅のペースにしたくなかったってことかな。ジャズさん、凄く悔しそうな顔をしている。


 それにしても、あれは土スキルかな? 石柱だったからよかったけど、あれが鋭く尖った状態や棘々だったらヤバかったんじゃないか?


「ジャズさんの必殺技に千本槍ってのがあるっす。地面から何本もの石で出来た槍が飛び出し貫くっす。地面にいるモンスターはまず躱せないっす。『牙狩り』の二つ名はそこからきたものっす」


 二足、四足歩行のモンスターでは躱せず串刺しになっるってことね。中でも四足歩行のモンスター討伐が得意ってことか。エグイ技だけど、今みたいに一本から複数での範囲攻撃も可能そうで凄い技だ。惜しむべきは空の敵に効かないってところだね。


 さすがに殺し合いではないこの試合で、鋭く尖った物での攻撃はできない。先ほどの円柱状の物での攻撃が繰り返されている。美紅もそれがわかっているようで、円柱の上を足場にして攻撃を躱し続けている。


 攻撃は苛烈で地面から縦横無尽に現れる円柱は、さすがの美紅もやり難そう。


 そう、思っていたら攻撃が急に止んだ。ジャズさん、なんかため息をついている感じ。大剣を肩で担ぎ、美紅に何か話しかけている。


「あの攻撃、もうやめるみたい~」


「なんで?」


「美紅に効果がないし、疲れるからだって~」


 疲れるんだ。精神的なものだろうか? あのスキルってマジックポイントみたいなのを使うわけではないのは聞いている。無限に使えるわけではないようだね。


 ジャズさんが大剣を構えると、美紅がこの試合初めて攻撃の構えを取った。


 そこから始まる剣術と体術の攻防。大剣での突き、払い、目まぐるしい攻撃。それを躱し、たまに大剣に扇子を這わせ攻撃をいなす。その間にも、蹴りや掌底を繰り出す美紅、そしてそれを防御するジャズさん。


 一瞬の判断ミスが大怪我に繋がり、見ているこちらも手に汗握る緊迫した時間が続く。それでも、徐々に優位性は美紅に傾き始める。


 ノーマロイドの美紅と鍛えているとはいえ人間のジャズさんでは、元々の性能が違う。美紅は半分も実力を出していないのに対して、ジャズさんはおそらく全力で戦っている。どんな体力馬鹿でも疲れが出てくる。あんな大剣を振り増しているなら尚更だ。


 その攻防に観客から双方に熱い声援が起こる。


「あのジャズって人、凄いね~。手を抜いているとはいえ、あの美紅と互角に戦っているよ~」


「妾の目を欺いていたとは、なかなかの者よ」


 美紅が相手じゃなければ、本気を見せることもなかったかも。三年前とはいえ、この実力の人が負けた相手ってどんだけ~って感じだ。天祐十傑、侮れない実力なのかも。


 美紅のラッシュが始まる。ローキックからのしゃがみ込みからの拳での跳ね上げ、そこから八極拳でいうこうと呼ばれるショルダータックル。


 態勢が崩れたジャズさんにこうからのアクセルキック回転飛び廻し蹴りが炸裂!


 これは決まったか!?





 猫(ΦωΦ) Ψ(ΦωΦ) Ψ(ΦωΦ) Ψ(ΦωΦ) Ψ(ΦωΦ) Ψ猫


 現代日本にダンジョンが⁉

 古来より続く探究者シーカーとなり異界アンダーワールドを探索して成り上がる主人公のお話。


 スメラミクニラビリンス~月読命に加護をもらいましたがうさぎ師匠には敵いません~

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054884258759

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