6.相当、闇が深いようです

 神々の悪意ある悪戯ともいえるブラックマーケット。


 まあ、俺も自重する気はないけどね。


 誰の干渉かは知らないが、せっかくもらったこの生命と力、使わずしてどうする!


 できれば、面白おかしくこれからの人生を過ごしたい。日本と異世界を行き来できるのだから。これ以上にない奇妙奇天烈、波瀾万丈、そして楽しい人生が俺を待っていると期待している


 さて、貢献度についてはまあいい。普通に売り買いしていれば貯まるらしいからね。もう一つ気になったことは、じゃない場合もありそうだということ。だけど、今は考えなくてもいいかな。


 ということで、次の優遇措置称号というものが何か聞こう。


「優遇措置称号というのは個人が与えられている称号により、このブラックマーケットで優遇措置を受けられるものですな。クート様のお持ちの称号はランク八に該当。文明値と同じで十段階に分かれ、十が最大ですな」


 俺の『世界の理から外れし者』はランク八らしい。受けられる優遇措置は三つあり、その中で一番気になったのが取引による文明値にランクが一つ上乗せされるというものだ。文明値が低くて買えなかったものが、貢献度を上げなくても買えるようになるのだ。


 それは重畳。俺の称号は良いものだったようだね。


 そのほか二つは軽減税率適用(ランク八)と屋台借用料半額になる。ショバ代を取るくせに、売り上げの税金まで取るのかよ! 非合法のブラックマーケットのくせに世知辛いぜ……。


「後学のために聞きたいのですが、称号ってほかにはどんなものがあるんですか?」


「そうですな~。有名どころでは勇者などですかな。勇者の称号はランク九、滅多に見ることはございませんな」


 勇者……いるんだ。っていうか! 勇者がブラックマーケットを利用していいんかい!


「悪人であろうと善人であろうと、お客様はお客様。問題ございませんな」


 闇が深けぇな……ブラックマーケット。


 もう少し称号について詳しく聞くと、人によっては複数の称号を持つ人もいる。神から与えられる称号だけでなく、神獣、聖獣、幻獣、精霊などからも与えられることがある。


 そして、俺の称号は世界から与えられたもの。別に珍しいことではなく、称号の中では世界から与えられるものが多いらしい。例を挙げると『自然の破壊者』、対して『自然の守護者』などがそれにあたる。


 俺の持つ称号は高いランクの称号なので、ほかの称号は気にしなくていいらしい。十分に特殊な称号みたいだね。


 専用カードについてはこんなところかな。わからないことがあればまた聞きにくればいい。


 デスナーさんは俺に少し待っていてくださいと言って、一度席を立ち奥に行ってしまった。そしてすぐに戻ってきた。


「クート様の名前と出身世界が二つあることに関して、問題ないかを上司に伺ったところ、別段問題ないとの回答をいただきました。これで、クート様も大手を振ってブラックマーケットをお楽しみいただけますな」


「ありがとうございます」


「このブラックマーケットでは何を売っても、何を買っても問題ございません。人身売買に臓器売買、武器弾薬、中毒薬物、果ては生活用品に至るまで何でも売買は自由。ですが、当方では売買に関することは、一切関知いたしません。すべて自己責任でございますな」


 ここからはその取引について説明をしてもらった。


 物を売るには必ず屋台を借りて物を売る規則ルールがある。直接、売りたい物をほかの屋台に持っていって、売ることはご法度らしい。


 ただし、で、店の主人同士が交渉して売り買いするのは問題ない。買い物するには屋台は必要ないけど、売りたいものがある場合は一度屋台を借りないといけないということだ。たった一つの物を売るにしてもね。


 そんな感じのルールがいくつかあるが、そこまでルールは厳密ではないそうだ。


 ただし、屋台を開いた時にこんなもの売ってますみたいな、ポップやのぼりなどは禁止。過度の呼び込みも禁止らしい。


 デスナーさんは自分で品物を探し回ることこそが、このブラックマーケットの楽しみ方と言っている。


 どんな品が売っているかは屋台に売られている品のリストがあるので、それを見てわからなけば店のご主人に聞くのが基本。ただ、長くブラックマーケットを利用していれば、自ずとどの店に何が売っているのかわかってくるからあまり気にしなくていいと言っている。


 屋台の使い方に関してはマニアルが完備されているので、それを見ればいいらしい。単一細胞種族でもわかるマニアルとデスナーさんが豪語している。


「いつでもここでご質問をお受けいたしますので、まずはお買い物をしてみてはいかがですかな?」


「そうですね」


「クート様は収納系のお力をお持ちではないようですので、まずは空間収納ができる品を探すのがよろしいでしょうな」


 なるほど、残念ながら異世界もののお約束、収納系のスキルを俺は持っていない。商売をするなら必要だね。品と言っているので定番のアイテムバッグのような物があるのかも。


「その品はどのくらいしますか? それによって、両替する金額が変わってきます」


「そうですな~。正直、ピンキリでございますな。品質によって値が変われば、文明値によっても値が変わりますからな~。まずは二十万Gくらいのご予算で探すのがよろしいかと愚考いたしますな」


 二十万Gか日本円にすると三十万円になる。三十万円でアイテムバッグが買えるなら安いものかな?


「両替はどうすればいいですか?」


「向こうにATMがございますのでご利用ください」


 ATMあるんかい!


「ですが、本日に限りこちらの窓口で両替いたしましょう。現金、カード、電子マネーがご利用できますな」


 電子マネーまで……。至れり尽くせりだね。


 カードを渡して四十五万円を三十万Gに両替してもらう。三十万Gは先ほど作った専用カードに振り込まれた。


「それではクート様、にブラックマーケットをお楽しみください」


 意味深な笑いを浮かべお辞儀をするデスナーさん。


 なんか、不気味だ。





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