70.酒は飲んでも飲まれるなです
最初に行くのはタコさんのお店かな。
「クートは美人ばかり連れてやがるな。こんちきしょうめ!」
「それより、タコさんの所で買い取りなんてしてます?」
「宝石の原石か? 俺っちの世界だとあんまし宝石って価値がねぇんだよ。せいぜい、百二十万Gってとこだぜ。ほかの店で売ればもっと高く買うと思うぜ?」
それでも、百二十万Gか。マヤリスより高く買ってくれるようだ。じゃあ、タコさんの助言どおりほかの店を回ってみますか。
帰る前に、クラーケン焼きを十舟買っておいた。なん個食べても飽きない美味しさだ。
「クラーケンが喋っておる……。クラーケンが喋っておる……」
ルナさんが壊れた?
ダビーさんの店に来た。
また、カウンターにグラスと食用油、それと……あれはうちの店で売っているお酒のスピリタスじゃないかな?
「フへッへッへッ。コいつをコうして……。クはッ!? コ、コいつハ凄ェー。体ノ中ガ燃えル、燃えル! 燃え上がっチまうぜェェェ!」
自動消火装置を付けることを推奨します。それと、スピリタスの一気飲みは危険なのでやめましょう。
しかし、食用油だけでは飽き足らす、アルコールにまで手を出したか……このジャンキー。お客さんがドン引きだよ。
そんな状況でも、買い物をするお客もお客だけど、ちゃんと対応をしているダビーさんは商人の鑑、いや駄目商人だな。
「ウへへへ、コれはクートさン。酔い品ヲ仕入れテくれましタ。定期購入ヲお願いしまス」
薬局で売ってる無水エタノールでいいんじゃね? スピリタスより度数が上だし、値段も安いよ?
「これは酒かな?」
「オ姉さん、イける口ですカ?」
「酒ハ得意ヨ!」
なんかルナさん、毒されてません?
「マずハ一献。ナ・ズドロヴィェ!」
「カたじケなイ。ブフッ!」
そうなるよな。アルコール九十六度だから。
「酒池肉林ガまっテるゼ」
ダビーさん、絶対にこっちの世界の情報持っているよね?
ちなみに勘違いしている人が多いけど、酒池肉林は豪華な酒宴を意味するもので、異性との性的、肉欲などの意味とはまったく関係ないからね。あしからず。
「こ、これは、酒が得意な妾でもキツイ……」
でしょうね。正直、これをストレートで飲むほうがおかしい。ショットグラスを出して、スピリタスとジンジャーエールを一対一で割る。もう一つのグラスには一対十で割ったものを作る。
その一対十で割ったショットグラスの上を手で覆い、カウンターに軽く叩きつける。グラスの中で炭酸が弾けシュワシュワになったところで一気飲み。
ぷはぁ~、一対十でもキツイわぁ~。
ルナさんに目で促す。本気でカウンターに叩きつけないでね? ドラゴンの力でやったら、グラスもカウンターも粉々になるからね? 振りじゃないよ?
ターンっと音がしてグラスを一気に呷るルナさん。
「クゥ~ッ!? これはイケる!」
「クートさン、ソれハ邪道でス。最低でモ十発ハ連発してクださイ」
死にますから! 絶対にやっちゃ駄目ですから!
って言ってる傍からカパカパと速射しているルナさん。どうなっても知らんぞ。
「それより、これの買い取り価格を教えてください」
「エメラルドですネ。五十万Gでス」
安っ!?
「安すぎません?」
「我々ノ世界でハ装飾品にエメラルドを使ウことハ何十世紀モ前ニ終わってイまス。工業用以外ニ使い道ハありマせン。工業用モ人工エメラルドのほうガ純度ガ高いのデ、天然エメラルドにハさほド価値ガありマせン」
文明が進むってことはそういうことなのね……。なんともストイックというか、リアリストすぎません?
「我々くラいノ文明値にナりますト、俗物的考えハ淘汰さレまスからネ」
植物油に目の色を変える俗物そのもののダビーさんから、その言葉を聞いてもまったく信用ができない。それとも、高文明ジョークだろうか? わからん。
ということは、ダビーさんの言を真実とするなら、文明値の高い世界の店では高値では買ってくれないということだね。
となると、行くべき店は一つだ。というか、そこしか知らない。
「世界がま~わ~る~。妾もま~わ~る~」
スピリタス一本をほとんど一人で開けたルナさんは、完全な酔っ払いだ。ドラゴンをも酔わすスピリタス、最強かも。
ふらつくルナさんに肩をかしつつ、魔女のおばあさんのお店に着いた。
「酔っ払いに売る薬はないさね」
「酔いに万能薬って効かないんですか?」
「……効くさね。酔っ払いに万能薬を使う馬鹿はいないさね!」
確かに、一本五十万Gをするものを、酔っ払い如きに飲ませる気にはならないね。
「それにして、ドラゴンを連れてくるとは、にーさん何者さね?」
「へぇ、わかるんですか?」
「それだけの魔素を内包した者など、神族かドラゴンくらいなものさね」
神族は滅多に下界には降りてこない。ドラゴンはいろいろな世界にいるみたいだけど、結構傲慢な性格みたい。ルナさんみたいなドラゴンは珍しいみたいだ。ちなみに魔女のおばあさんの世界のドラゴンは、話の通じない凶悪極まりない存在らしい。
ルナさん、ちょっと邪魔なので屋台の横に座らせておく。
「酒は~、妾の酒は~」
縋りついてくるルナさんを足蹴にして離れる。
「ドラゴンを足蹴にするにーさん、素敵さね……」
「おばあさんにそんなこと言われても嬉しくない」
「呆れているだけさね。本気にするんじゃないよ」
してねぇよ。そんな性癖ないから!
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