86.全員分揃いました

 外は寒い。当たり前だ冬なんだから。ダウンジャケットを着て空港の外をブラブラ。ドアを出せるいい場所を見つけたので、部屋に戻る。


「お帰り~」


「お帰りなさい」


「ちぃ~」


 ルナとピムはゲームをしていて、俺のことに気づいていない様子。


「また、数時間後には飛行機に乗らないといけないけどね。それと、出入国審査はチケットがないと駄目みたい」


「だよね~。BMブラックマーケットでハッキングできる機械を買うしかないね」


「となると、ダビー様の所でしょうか?」


「まあ、そのことは後で考えよう。ちょっとBMブラックマーケットに行ってくる」


 今日が約束の日だ。


「出来てるよ。全部ね」


 俺とルナ、セバス、メイド隊四人、パトリック、ハンスの分だ。それと、屋敷の残金。合わせて四億七千五百万G。


 一つ一つ、鑑定してチェック。すべて問題なし、いい仕事をしている。


 支払いを済ませると、鍵とカードを三セット渡される。


「屋敷の鍵だよ。カードの暗証番号は紙に書いてある。シリンダーキーは合鍵を作ってはいないけど、信用するかは君次第。まあ、新しい物に交換することを薦めるよ」


 その辺は本来なら信用問題なのだろうけど、この男との間は金だけの繋がりで信用なんてものはないから交換が必要だろう。カードなどのセキュリティーも総点検したほうがいい。その分野はアイリスに任せればいい。


「良い取引だった。また、頼むこともある。よろしく」


 高坂さんの国籍をとも思ったけど当分はいいだろう。


「こちらこそ。良い取引相手だったよ。次は大口で武器でも買って欲しいね」


「なんだ、俺にテロでも起こせって言ってるのか? 狙うとしたら赤の国になるぞ?」


「じょ、冗談だよ?」


 じゃあ、言うな。それにここの武器はいらない。ほかで高性能な武器を買ったほうがいい。弾薬をいちいち詰め替えるのは面倒だ。


「これがパスポートという物かのう? こんなペラペラの物が重要なのかのう?」


 番号とICチップがね。


 アイリスに書類を全部渡しておく。そして、カナダに戻り飛行機に乗って、夕方日本に着いた。疲れてはいないけど、疲れた……心がね。


 美紅とアイリス、ルナはその間に冬服やスマホを手に入れに行っていたようだ。明日はカナダに三人を送っていく。就労ビザの申請だ。


 朝、三人をカナダに送った後に俺も冬服を買いに行った。アルマーニャ、ニャンヒル、ニャルフローレンでコートや服、靴、マフラーなどの小物を買い揃えた。これで、冬も怖くない。


 帰りにたい焼き屋と焼き芋屋を見つけたので大量買い。たい焼きなのにピザやお好み焼きがあり驚いた。それ以上に焼き芋の種類の多さにも度肝を抜かれた。十種類すべてをあるだけ買ったら驚かれた。


 部屋に帰ってたい焼き、石焼き芋パーティーだぜ!


 ピムとチロルは大喜び、ついでに高坂さんも。カミーユは少しずつ口に入れ、味を確かめながら勉強しているようだ。


 この焼き芋のいい匂いと、とろけるような食感がたまらない。焼けた皮まで美味しいなんて、最近のサツマイモって凄ぇな。


 これらに合う飲み物はお茶の一択。カミーユが煎茶、番茶、ほうじ茶、玄米茶を淹れてくれ、違いを楽しみながら味わう。


 なんて、していると美紅たちとの約束の時間。買ってきた服に着替えてカナダに移動。メールを見ると、空港内のカフェで待っているみたいだ。


 美女三人がカフェでコーヒーを飲む姿は絵になる。テーブルに皿が積まれてなければね。何をそんなに食べたのだろう?


 せっかくなので、俺もカナダのコーヒーを注文して味わってみる。普通だな。


 申請は問題なくできたそうだ。申請に行く前に郵便局で私書箱を開設したみたいで、そこに書類が送られてくるそうだ。発行に一か月はかかるみたい。たまに確認しに来ないといけないね。


 次はスイスだ。せっかく家を買ったのだから使わないともったいない。飛行機で何時間かかるんだろう? 次の店の休みの日に出発だな。


 その前にハッキングツールを探そう。


「アるヨ。チュウ~」


 今日は不審なことをしていなかった。


 だがしかし! 頭にドリンクホルダーとストローの付いたヘルメットを被っている。ドリンクホルダーにはもちろん食用油だろう。それを、ストローからチュウチュウと吸っているダビーさん。あなたって……やっぱり十分に不審者だ。


 もう、突っ込まないぞ! 突っ込まないからね!


 話を戻す。


 前に買った、ヘキサアンズス・タイプゼロ なんでも聞いてよ教える君にオプションを付ければいいそうだ。ヘキサアンズス・タイプゼロ 入っちゃうぞ任せろ君というらしい。嘘だな、価格は五百万G。


「文明値六如きノ政府の中枢ニ入るナどたヤすきこト。サイバーデストロイしチまエ!」


 やらないから。そんなことやったら駄目でしょう!


 取りあえず、アイリスが使い方を学んでいる。


「クートさン、何カ珍しいオーガニックオイルはアりマせんカ?」


「探せばありますが、珍しい物は一斗缶では売られていませんよ」


「チビりチビり飲めトいうコとですネ」


 いえ、飲む物ではありません。まあ、ドレッシングにするのはありですが。


「動物性油は駄目なんですか?」


「アれはアれで、味がアってイいのデすガ、燃焼効率ガ悪いのデ飲んだ後ニ全面メンテナンスが必要ニなるンですヨ」


「そ、それは大変ですね。いくつか、珍しい食用油を仕入れてみます」


「ヨろしくオ願いシまス」


 ダビーさん、うちの常連さんだから仕方ないね。


 探してみるか。







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