110.プレオープンします
今日はプレオープンの日。
午後の数時間だけ営業してみんなの動きを確認する。
お客様は商業ギルドのみなさんに頼んだ。忙しい中来てくれるので、全品半額プラス高級チョコを少しだけおまけすることにした。
「――ッ⁉ と、とても綺麗なお店ですね。この内装は斬新です。どこで仕入れたものでしょうか?」
商業ギルドのセイルさんが店の中に入って周囲を眺め、息を呑んだ表情で尋ねてくる。
店に入る前にも、ガラス張りの店舗前に驚きの表情で同じようなことを言っていた。
教えられるわけないんじゃん。
ガラスはドワーフ族のみが扱える秘技ということは聞いているので誤魔化しは利いた。でも、この壁紙は無理。マヤリスの技術では真似できない。できたとしても、とんでもない価格になると思う。
「さすがに教えられませんね」
「手に入れることは可能なのですか?」
「可能ですけど、買える人は限られますね」
「そうなりますよね……」
残念そうな顔をしているわりに、頭でそろばんを弾いている感じ。面倒事は勘弁してよ?
店内を見てもらった限り、掴みはOK。今度は全員に試食をしてもらう。
型枠を使ってチョコレートを作っているけど、どうしても割れてしまったりする物が出てくる。それを試食品とした。明日の開店本番でも配ろうと思っている。
今日はスイートチョコしか作っていない。明日からはミルクチョコなどの高級チョコも売り出す。仕込みはずっとしていて、収納バングルに収納しているので余裕はあるから大丈夫。
「「「甘~い♡」」」
商業ギルドの女性陣が愉悦の表情で歓喜の声を上げる。
「こ、これは凄いですね……。今までの飴とも違い、まったく新しい甘味といっていいでしょう」
「原料は元々薬として使われていたようです。それを加工して砂糖を加えた物がこのチョコレートになります。砂糖を加えているので薬効は低いですが、砂糖の量を少なくした薬効の高い品もあります」
砂糖を控えたハイカカオチョコレートも作っている。薬効が高いという理由で作ったのでなく、値段を抑えた商品をと考えた結果作ることになった。
「今日は出していませんが、明日からは高級チョコレートも売り出します」
「高級なチョコレートですか?」
「材料と手間をかけたチョコレートで、高級志向をよしとする層を狙った商品です。その値段に見合う逸品といっていいでしょう」
「凄い自信ですね。いや、これだけでも凄いのですから、手間や値段を惜しまなければ凄い物が出来るのは当然か……」
チョコの値段は二センチ角が五個入りで五百レト。五個刻みで売り出す。正直、高ぇーって思ったけど、これでも安過ぎらしい。ほかの店で、もしこれを売り出すとしたら十倍以上の値段になるそうだ。
代わりに高級チョコのほうは半端なく高い価格設定になっている。でも、ちゃんと箱入りだし、中はパラフィン紙を使用しているし、箱には包装紙とリボンでラッピングもする。それだけでも、価値はあると思う。
そろそろ、販売を開始しますか。
ライアに目配せする。ライアがショーケースにかかっていた布を取ると、綺麗に陳列されたチョコがお目見え。
「「「「おぉー」」」」
ケーキほど色鮮やかではないけど、綺麗に並べられ照明で照らされたチョコは黒いダイアといっていいほどの輝きを見せつける。
今日は半分も埋まってないけどね。まあ、明日からが本番だ。
店員の女の子たちが着ているユニホームは白と黒を基調としたゴシック系のメイド服を可愛らしさを強調したもの。メイド隊がアイリスと考えて作ったハンドメイド品。いや、マシンメイド品になるのか? いやいや、メイドメイド品か?
高級チョコ以外は紙袋に入れて渡す。袋は大中小で柄は二種類用意した。一つは女性向けの白地にピンクの花びら。もう一つはただの茶色の袋。女性だけではなく、男性も買いに来ると思い用意した。
一時間もかからず完売。今回は半額とはいえ、さすが商業ギルドに勤めているでけあって、みなさんお金に余裕がある。この人たちは必ずリピーターになる。そして、商業ギルドに勤めるという利点を活かして、うちの評判を周りに広げてくれる。特に裕福層に。
このチョコレートを裕福層が見逃すわけがない。甘味に飢えたこの世界で金に困らない裕福層なら必ず手を出す。そして嵌り中毒になり、抜け出せなくなる。
「アマミヤ商会様が自信がある理由が理解できました。間違いなく話題になり繁盛することでしょう」
商業ギルドのお墨付きももらった。明日は忙しくなるぞ。
少しの間、メアリーとカミーユにはこちらの手伝いをお願いしてある。お店をオープンさせれば当分忙しくなると思うし、雇った子たちが慣れるまでは仕方がない。
それと、ハンスとエレナのパスポート申請が通り次第、日本での会社立ち上げをやらせる。銀座、新橋、青山、新宿など店を作る候補は考えているけど、まだ未定。その辺の調査もしてもらう。
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