3.

 夜、圭介はユウキのバイクに乗せられて、高辻の死んでいた廃工場に向かった。倒れていた場所だというコンクリートを撫でる。冷たく湿った感触が手のひらを満たす。そばにはまだ、圭介が怪我をしたときにできた血の跡がはっきりと残っていた。


「気が済んだか。」

 ユウキは少し離れた場所で単車のキーを回していた。

 誰かのそばにいるようには作られていない人間。

 圭介は立ち上がり、ユウキの方に向き直った。


「……先輩、頼みがあるんだけど、」

 ユウキが怪訝な顔をした。

 雨脚が強くなる。


「俺もその神さまにあわせてくれよ。高辻の見たものが知りたいんだ」



(了)

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エンパシー 真珠4999 @shinju4999

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