2.

 宿題が済むと、大抵その後は二人でその日の夕食を作る。

 どちらが言い出したわけでもない。最初に彼の部屋に行った日、圭介の腹の音を聞いて高辻が勝手に作り始めた。

 それ以降、いつも夕食を御馳走してくれる。


 高辻はその無骨な見た目に反して、意外にも料理の手際は良く、和から洋までレパートリーは幅広かった。いわく、住み込み時代に兄貴達に仕込まれたのだそうだ。その兄貴直伝の包丁さばきや味付けを、圭介に一つ一つ丁寧に教えてくれた。

 教えながら、自身やユウキたちのグループについて語ることもあった。


 高辻はで働いていて、普段は会計方の仕事をしているのだといった。

 ユウキたち不良グループは、組織としては直接的なつながりはないが、有事の際は手先として動かせるらしい。だから、監視も兼ねて彼やその部下が管理している。

「気の滅入る仕事さ。辞めるわけにもいかないしな」

「なんで、」

「そりゃそうだろう。こういう組織はね、簡単に辞められちゃ困るんだ。だからわざわざ、神さまの前で親子の誓いなんかするんだ」

「神さま?」

「よくあるだろう。組織の中で祀る神が。天照大御神とか、神農大帝とか、」

 それがよくあることなのか、圭介には分からなかった。彼の口ぶりから、冗談なのか本当なのか、まだ区別がつかない。ぽかんとしているのを見て、高辻は続けた。


「まあ、一般的な話ではないかもしれないな。いいか、この手の組織はね、親分が一番上で、その下にたくさんの子分がいる。だがその親分のさらに上には神さまがいる――そういうことになっている。

 多くは形だけ頂いて、大義名分を得るだけだ。だが私の組織は違う。

 本物の神さまがいる。

 声もある。形もある。

 海の向こうから渡ってきたと聞いているが、どこから来てどこへ行くのか本当のところは誰も知らない。

 そうだな、秘密にすると約束するのなら、少しだけ話してやってもいいだろう。」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る