第21話 殿下の気持ち

 殿下は、わたしの殿下への想いが理解できないでいる。


 それは少し悲しいところではあるが、それでめげてはいられない。


 わたしは殿下への想いをこれからも伝えていく。


 めげずに続けていけば、いつかはわたしの想いは通じていくだろう。


 そう思って、殿下に話しかけようとすると、殿下が続きを話し出した。


「きみにはもう一つ話をしなければならない。というより、今日のわたしの話はどちらかと言うと、こちらが主題だ」


「主題でございますか?」


「そうだ」


 主題となると、これまで以上に、これからのわたしたちの関係に影響してくる話だろう。


 わたしはあふれかけていた涙を抑え、今までよりもさらに殿下の言葉を受け止める態勢に入っていく。


「それでは話をお願いしたいと思います」


 わたしがそう言うと、殿下は話をし始めた。


「わたしはきみのことを避けようとしていたのは今まで話していた通りだ。しかし、心の底では、きみとは初めて会った時から、どこで親しみを覚える気持ちがあった。それが何なのかは全くわからなかった。きみとは幼い頃一緒に遊んでいた記憶はないし、それ以前に会っていた記憶もない。念のため、父上や母上、執事にも聞いたのだが、そういうことはなかったという。そして、前世の記憶の中にもなかった。いや、最初は前世の彼女の生まれ変わりだと思ったこともある、美しい女性というところでは共通点があったからだ。しかし、きみは彼女の生まれ変わりではないことは理解できた。初めて会った時点で比べると、きみの方により親しみを覚えていたし、言葉ではうまく説明できないが、違う人間であることは理解することができていた。でも生まれ変わりではないとするとより一層、きみに親しみを覚える気持ちがわからなくなっていく。その為、わたしは気のせいだと思うことにした。そして、『親しみを覚えること自体、この女性に心を許していることになる。この女性には、改めて心を許してはならない』とわたしは思った。それで、この気持ちをずっと抑え込んできた、今まではそれに成功してきた。しかし、ここ一週間ほど、急激にこの気持ちが沸き上がってきていたのだ。わたしは決してきみに恋をしているわけではない。前世のような苦しみは味わいたくないので、きみとはこのまま形式上の夫婦でいきたいという気持ちは今でも強い。でもきみに親しみを持つ気持ちの方もだんだん大きくなってきている。特にこうして今日、きみと話をしている内に、その気持ちはますます大きくなってきているのだ。わたしはきみに対して、これからどう対応していいのかわからなくなっている」


 殿下はそう言うと、少し顔を赤くする。


「きみはわたしと会った記憶はあるのかな? わたしの方は今申した通り、会った記憶はないんだ。もし記憶があるのなら話をしてくれるとありがたい。きみに親しみを覚えているのは、きっとどこかで会っていたからだと思うのだ」


 殿下は今までの厳しい表情とは違い、少しだけ柔らかさのある表情になってきている。


 少しだけだとは思う。


 しかし、わたしの方に心が向き始めているような気がしてきていた。

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