第30話 一日中、殿下のおそばにいたい

 わたしたちは、二人だけの世界に入った後、通常の世界に戻ってきた。


 しばらくの間、わたしたちは、ベッドの上で横になって手をつなぎあっていた。


 そして、お互いのやさしさを味わっていた。


 二人だけの世界に入り、わたしは殿下に全力で愛された。


 先程も思ったが、もう殿下とは、たとえわずかの間だったとしても、離れたくはない。


 ますます殿下のことが好きになっていく。


 やがて、殿下は、


「今日は、あなたと初めて二人だけの世界に入ることができて、本当によかったです。うれしくてたまりません」


 と言った。


 少し涙声になっているほどだ。


 殿下の心の底からのうれしさ、やさしさが伝わってくる。


「殿下、わたしは今、幸せです。これほどのうれしさは、今まで味わったことがありません」


「わたしも幸せです。でもこれはまだ始まったばかりです。わたしはこれからあなたのことをもっと幸せにしていきます」


「そう言っていただけると、ますますうれしい気持ちになっていきます。わたしも殿下のことをもっと幸せにできるように一生懸命努力していきます」


「一緒に幸せになっていきましょう」


 殿下とわたしは、また唇と唇を重ね合わせていく。


 ああ、殿下。わたしは殿下の為にますます尽くしたくなってきます。


 そして、一日中、おそばにいたくなります。


 お互いの唇を離した後、わたしは、


「一つお願いをしてもよろしいでしょうか?」


 と言った。


「なんでしょう?」


「無理なことはわかっていますが、それでもお願いをさせていただきたいと思っています」


「わたしができることであれば、していきたいと思いますので、遠慮なく言ってください」


「ありがとうございます。お願いというのは、これからなるべく殿下と一緒にいさせていただきたいということです。特に朝・昼・晩の食事については、今までは別々でしたが、これからはできるだけ一緒にしていただけるとありがたいです」


 少し差し出がましいことかもしれない。


 でも。話だけはしておきたいところだった。


 本当は、食事だけの話ではなく、一日中、殿下と一緒にいたいと思っている。


 でも、それはさすがに無理な話だ。


 とはいうものの、今までは夜のほんの少しの時間しか、わたしは殿下のそばにいることはできなかった。


 相思相愛になったのだから、これからは殿下のそばにいる時間を少しでも長くしたい。


 食事を一緒にするというのは、その点、いい案だと思っている。


 ただ、殿下はどう思うだろうか?


「わたしもあなたと朝・昼・晩の食事をしたいとずっと思ってきたんです。でもわたしは、あなたのことを避けるという方針から、あなたと食事をご一緒にすることを避けていました。申し訳なく思っています。これからは、極力、あなたと朝・昼・晩の食事をとりたいと思っています」


 殿下も賛成してくれている。


 ありがたいことだ。


「殿下と夫婦として、一緒に朝・昼・晩の食事をするのは、わたしの一つ夢でした。前々世では、一緒に食事をしたことはあったとはいっても、夫婦としてではありませんでしたし、婚約者としてでもありませんでした。それが、これから夫婦としてできると思うと、うれしくてたまりません」


「わたしは今まで、そうしたあなたの気持ちに全く寄り添うことができませんでした。その分、これからはあなたの気持ちに寄り添っていきたいと思っています」


「そういっていただけるだけでわたしはうれしいです」


 わたしたちは微笑みあった。


 そして、殿下は。


「わたしは、今まで疎遠だった分、もっとあなたと親しくなりたいと思っています。夜はまだまだ始まったばかりです。これからまた、二人だけの世界に入り、仲睦まじくなっていきましょう」


 と少し恥ずかしそうに言った。


 わたしも、


「よろしくお願いします」


 と恥ずかしさを抑えながら言った。


 わたしたちは、キスをした後、二人だけの世界に入っていく。


 甘くて、素敵な世界。


 殿下とわたしは、ますます幸せになっていくのだった。

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