第26話 相思相愛になった殿下とわたしのキス

 わたしは、


「わたしも今まで我慢をしてきた分、殿下を愛していきたいと思っています。わたしは殿下もことが好きです。愛しています」


 と恥ずかしさを抑えながら言った。


「今まで、その言葉をずっと言っていただいてありがとうございます、あなたの言葉は、だんだんわたしの心には通ってきていたのです。でも今までは、酷いことをあなたにしているのに、なぜそういう言葉が言えるのだろう、という思いが強くて、素直にその心を受け取ることはできませんでした。今思うと、何をやっていたのだろうと思います。しかし、今は違います。あなたの想いを心の底から受け入れることができます」


 殿下はそう言った後、


「あなたの手を握りたいです。よろしいですよね」


 とわたしに聞いてきた。


「もちろんです」


 わたしがそう言うと、殿下はわたしの手を握ろうとして、自分の手を近づけてくる。


 そして、殿下とわたしは手を握り合った。


 わたしの胸のドキドキはどんどん大きくなっていく。


 前々世では何度もマクシテオフィル殿下と手を握り合ってきたし。今世でも婚約式と結婚式の時に手握り合ってはいる。


 前々世ではマクシテオフィル殿下と相思相愛になっていたので、手を握り合う時は胸のドキドキは大きくなっていった。


 しかし、今世では形式的なものにすぎなかったので、そこまで胸がドキドキすることはなかったといっていい。


 今のわたしたちは相思相愛となって、手を握り合うことになる。


 今世での、今までの胸のドキドキとは大きく違う。


 そして、前々世の時よりも胸のドキドキは大きい。


 しばらくわたしは殿下と手をつないだままでいた。


 殿下のやさしさが奔流のように流れ込んでくる。


 うれしさで心が満たされていく。


 しかし、これはまだまだ入り口に過ぎなかった。


 やがて、殿下は、


「セノーラティーヌさん、好きです」


 と言うと、わたしを抱き寄せた。


 わたしの心は沸き立ち始める。


「わたしも殿下のことが好きです」


「これから何度でも、いや、数え切れないほど、あなたのことを好きだと言いたいです」


「わたしも殿下に、これから数え切れないほど、好きだと言いたいです」


「セノーラティーヌさん、わたしはもうあなたのいない人生など想像もできないです」


「殿下、わたしもそう思っています。殿下が一緒にいない人生などもうありえません、これからずっと一緒にいたいです」


「わたしも同じ気持ちです。これからずっと一緒にいましょう」


「よろしくお願いします」


 殿下とわたしは微笑み合う。


「セノーラティーヌさん、わたしはきっとあなたを幸せにします」


「殿下、わたしは殿下を支え、尽くしたいと思います。そして、一緒に幸せになっていきたいと思います」


 殿下の唇が近づいていく。


 わたしも殿下に唇を近づけていった。


 殿下とわたしにとっては、結婚式以来のキス。


 しかし、それは、前々世で相思相愛になった時のような心が通じ合うものではなく、形式的なものでしかなかった。


 ようやく前々世以来の、二人の心が通じ合うキスができる。


 そう思い、心がますます沸き立ってきた時……。


 相思相愛の殿下とわたしの唇と唇は重なり合っていった。


 心がとろけ始めていく。


 殿下、愛しの殿下……。


 わたしは幸せな気持ちになっていくのだった。

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