第25話 わたしに心が傾いていく殿下
殿下は心の深いところで、わたしに謝りたいと言っている。
「そんな、心の深いところで謝るなんて……。わたしはもう気にしていません。それよりも夫婦として、仲睦まじくしていくことが大切です」
「あなたにそう言っていただけるのはありがたいことです。でも、わたしは謝らなければなりません。わたしはあなたのことが好きでした。愛していました、このまま仲を深めて、婚約、結婚へと進みたかったのです。それなのに病気で倒れてしまい、婚約さえもできませんでした。そして、あなたを一人にして、わたしはこの世を去ってしまいました。病気だから仕方がないかもしれません。しかし、わたしは、残されてしまうあなたがかわいそうだと思いました。ですから、あなたには、わたしのことを忘れて、他の人と結婚をして幸せになってほしかったのです。でもあなたは、わたし一筋でした」
殿下はわたしの幸せを願って、他の方との結婚をすすめていた。
しかし、わたしには殿下しかいなかった。
「あなたが前々世で独身を貫き通したことは、先程、あなたから伺いました。この世を去るまでずっとわたしのことを想っていたと伺いましたが、最初伺った時は、そこまで心に染み入るところはありませんでした。申し訳なく思います。しかし、自分で思い出してからは、ここまでわたしのことを想ってくれたのだと思うと。ありがたくて、涙が出てきます。わたしは幸せものだと思います」
殿下はそう言うと、波を流し始めた。
「あなたはとても素敵な女性で、わたしにはもったいない存在です。そして、わたしのことを前々世から一途に想っていただいております。それなのに、わたしはあなたに酷い仕打ちをしてきてしまいました。なんといってあなたにお詫びをしていいのかわかりません」
しばらくの間、殿下は泣き続けた。
今までは心の底にあった殿下のわたしに対するやさしさが、奔流のように流れ込んでくる。
わたしも胸が熱くなり、目から涙がこぼれてきた。
しばらく、お互いに涙を流し合う。
やがて、わたしは涙を拭き、
「殿下の前世での話を今日伺いましたが、そういう仕打ちを受けたら、心が傷ついてしまうのは仕方のないことだと思います。そして、今世で同じ失敗を繰り返したくないという気持ちになるのも無理はないと思います。しかし、殿下、先程も申しました通り、大切なことは、これから仲睦まじくしていくことだと思います。わたしは今度こそ、殿下と夫婦として、一緒に幸せになっていきたいと思います」
と熱を込めて言った。
それに対して、殿下は涙を拭いた後、
「そう言っていただいてありがとうございます」
と言った。
そして、心を整えると、
「わたしはこれから、あなたと仲睦まじい夫婦になります。あなたを愛し、幸せにします」
と力強い言葉で言った。
「殿下……」
「ここまでくるのに、時間をかけすぎて申し訳ありませんでした。あなたを今までお待たせした分、愛していきたいと思っています。わたしはあなたのことが好きです」
殿下は少し恥ずかしそうに言う。
わたしも恥ずかしい気持ちになってきた。
しかし、殿下にその想いは伝えたい、
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