わたしは王太子殿下と白い結婚をした。殿下はわたしのことを嫌っている。でも殿下は前々世でわたしと親しくしていた方だった。わたしは一生懸命、殿下に想いを伝え続け、殿下に溺愛されることを待ち続けています。
第36話 殿下と一緒にこの王国をもっとよくしていきたい
第36話 殿下と一緒にこの王国をもっとよくしていきたい
今までは、この財政難の対策について、殿下から協力を求められることはなかった。
それだけわたしのことに対する信頼が厚くなってきているのだと思う。
ありがたいことだと思っている。
しかし……。
まずわたしは殿下のことが心配になっていた。
財政再建というのは、わたしも公爵家で経験をしているのだが。必ずといっていいほど反発をする人たちがいる。
特に、公爵家内部の支出の切り詰めはどうしてもしなければならなかったので。
「決して贅沢をしているのではない。必要な支出をしているだけ」
といって反発する人たちが相当数いた。
これに対して、父上が先頭に立って協力を要請し、自ら費用の節約に取り組んだので、反発は次第におさまっていった。
しかし、公爵家でもこのように反発する人たちがいた。
もし王室内部の支出の切り詰めをしようとしたら、公爵家以上の反発があると思われる。
政策への反発だけならまだいいが、殿下そのものを嫌いになる人も出てくるかもしれない。
その点が心配だった。
そうなってほしくはない。
殿下は国民全員から尊敬される存在でいてほしい。
そう思っていると、殿下は、
「財政再建の対策案に反対する人たちがいたら、わたしがていねいに説明し、理解をしてもらいます。あなたにその点は絶対に迷惑をかけません。安心してください」
と言ってくれた。
殿下はここまで気づかいをしてくれている。
でも殿下にばかり負担をかけさせてはいけない。
わたしは。
「もし反発をする人がいたら、殿下だけではなく、わたしもていねいに説明していきたいと思います。わたしたちは、二人でこの王国の為に働いているのだから、御互に助け合っていかなければならないと思います」
と言った。
「ありがとうございます。ただ、反発そのものはわたしが受け止めていきます。これはわたしがしなければならないことですので」
殿下は頼もしい。
わたしは胸が熱くなってくる。
そこも、わたしが殿下のことを好きになっているところの一つだ。
ただ、公爵家と王国では、領土の大きさも財政の規模も大きく違っている。
公爵家では成果を上げることができた対策も、王国では通用しない可能性がある。
わたしにそのような大切な役目は務まるのだろうか?
断った方がいいのではないだろうか?
そういう気持ちも湧いてくる。
しかし、殿下はわたしのことを信頼してくれている。
その信頼に応えなければならないと思う。
わたしは殿下のことが大好きで、愛している。
この愛している方のお役に、少しでも立ちたいと思う。
殿下は、心を整えると、
「この話を受けていただきませんでしょうか? あなたには多くの負担をかけることになるので、申し訳ない気持ちで一杯です。しかし、財政再建を行う為には。あなたの力が必要なのです。わたしと一緒に財政を再建するとともに。父上が方針として掲げている『国民全員の生活を安定させる』ということを実現し、この王国をもっといいところにしていきたいと思っています。この思いを理解していただけるとありがたいです」
と熱を込めて言った。
ここまで殿下は言ってくれている。
わたしも殿下に応えなければならない。
「わたしでよろしければ、話をお受けさせていただきたいと思います。殿下と一緒に財政再建について、一生懸命取り組んでいきたいと思います。よろしくお願いいたします」
わたしはそう言って、頭を下げた。
「この話を受けていただき、ありがとうございます。これから一緒に、この王国をよくしていきましょう」
殿下は熱を込めてそう言った後、わたしの手を握る。
殿下のやさしい心が流れ込んでくる。
心が沸き立ってきた。
抑えようとしても。抑えるのは難しい。
このまま抱きしめてくれて、キスをしてくれるといいのだけど……。
この場では無理な話だ。
夜に期待するしかない。
わたしは、なんとか沸き立つ心を抑え、
「殿下と一緒にこの王国をもっとよくしていきたいと思います」
と言った。
殿下は、
「ありがとうございます。あなたと一緒であれば。きっと成功します」
と言って微笑むのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます