第35話 殿下の協力要請
殿下は話を続ける。
「わたしはあなたを避けていた時、あなたについての話はなるべく聞かないようにしていました。あなたについての評判のいい話を聞くと、それだけわたしの心があなたに傾いてしまう気がしていたからです。しかし、それでも、あなたの公爵家での評判のいい話は耳に入ってきていました。今はあなたとこうして本物の夫婦になったので、率先してあなたについての評判のいい話を聞くようにしています。あなたが公爵家で上げた大きな成果についても、以前は耳に入ってくることが嫌だったのですが、今は、その話を聞く度に、わがことのようにうれしくてたまりません。公爵家の方々は全員あなたのことを高く評価しています。わたしもあなたのことを高く評価しています。この気持ちを受け取っていただけるとありがたいです」
殿下がわたしのことを高く評価してくれているのはうれしいことだ。
より一層自分磨きをしていきたい。
「わたしのことを殿下のご期待に沿えるように、もっと努力していきたいと思っています」
「ありがとうございます。それでは本題に入りたいと思います」
殿下は一度言葉を切った後、話をし始める。
「あなたは財政難に陥っていた公爵家を見事に立て直しました。今。この王国も財政難で苦しんでいます。わたしはこの四月から、父上より、かなりの権限を委譲されています。財政についての権限も委譲されたので、改善案を検討してきたのですが、いい案が出ず。まとまりそうもありません。わが王国は、父上が。『国民全員の生活を安定させる』という方針を掲げています。その方針に従って、公共事業を行い、社会福祉を充実させています。しかし、公共事業や社会福祉の支出が年々増大傾向にあり、これが王国の財政を悪化させている要因の一つとなっています。とはいっても、その支出は必要なものなので、減らすわけにはいきません。せめて現状維持で行きたい。でも現状維持では、赤字のままです。増税をするという案もあります。しかし、それは国民を苦しめることになり、社会の活力を奪ってしまいますので、採用することはできません。ここのところで、対策案が行き詰まっているところがあります。そこで、公爵家で財政を立て直したあなたに協力をお願いしたいとわたしは思ったのです」
王国の財政が赤字で厳しいということは、公爵家にいた時から話としては聞いていた。
殿下との仲が睦まじいものになってからは、殿下からも直接聞くようになっていた。
「王国の財政は赤字になったのはここ五年ほどのことです。しかし、急速に赤字幅が拡大しているので、このままでは王国は財政破綻をしてしまう可能性があります。今の内に対策をとっていく必要があります。その対策を立案する為には、あなたの協力が必要なのです。わたしはこれから、財政再建の為のプロジェクトチームを発足させます。わたしがそのチームの総合リーダーとなりますが、あなたにはその中の対策立案部門のリーダーになっていただきたいと思っています。そして、そこで対策の立案をしていただきたいと思います。王太子妃としての公務もあなたにはありますので、負担が増えることになってしまい申し訳ありませんが、そこはわたしが配慮をしていきたいと思います。よろしくお願いしたいと思います」
殿下はそう言って頭を下げた。
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