第32話 お互いの気持ち
わたしたちの結婚式から一か月半ほどが経ち、本物の夫婦になって半月ほどが経った。
まだ半月ほどではあるものの、その仲の睦まじさは前々世を既に超えていると思う、
それでもわたしは、殿下への想いの強さをまだまだ伝えきれていない。
殿下への想いが、毎日毎日、ますます強くなっているのが、その大きな要因であることは理解をしてきた。
それだけ殿下が魅力的なのだ。
このまま一緒にいるうちに、自然とお互いの想いの強さは伝わってくるようになると思っていたけれど、この調子だとかなりの年月がかかりそうな気もする。
あせる気持ちも湧いてこないわけではない。
でもわたしたちは夫婦なのだから、年月を気にしてはいけないのだろう。
年月がかかっても、想いの強さはお互いに自然に伝わっていく。
それが大切なことなのだろうと思う。
殿下の方も、わたしが思っていることと同じことを想っているようだ。
殿下は、
「あなたが魅力的なので、あなたへの想いがどんどん強くなっていきます。それで、ますます、あなたに対しての強い想いが伝えきれなくなっています」
と言っていた。
わたしのことを褒めてもらえるのはうれしいことなのだけど……。
殿下は、わたしのことを買いかぶっている気がする。
最近、そう思うことが少しずつ増えてきた。
今は新婚気分で、わたしのいいところばかりを認識していると思う。
でも半年、一年と経っていくうちに、わたしの嫌なところを認識してくるのではないか?
そうなれば、嫌われてしまい、別居、そして離婚されてしまうのではないだろうか?
そういう気持ちが湧いてくる。
いや、それ以前に、今の時点でわたしは殿下とつり合う存在なのだろうか?
前々世からわたしのことを想ってくれていることはとてもありがたいこと。
でも、殿下にはわたしよりも、もっとふさわしい素敵な女性がいるのでは?
殿下は、前世で苦しんだ為に、女性を遠ざけてきた。
殿下の傷ついた心を癒すことができて、しかも魅力的な女性。
そういう女性がいるのであれば、別にわたしでなくてもいい気がする。
しかし、そういうことを思っていてもしょうがない。
自分磨きを続けて、殿下にふさわしい女性になっていくしかないのだ。
そう思い、わたしは毎日、一生懸命自分磨きを続けていた。
そんなある日の夜。
殿下とわたしは、ベッドの上に座り、肩を寄せ合っていた。
「最近あなたはますます美しくなってきています。前々世から想ってきたとはいっても、このような素敵な方にわたしがふさわしいのかどうか、ということを最近思うことがあります」
殿下はわたしにそう言った。
わたしは驚いた。
わたしと同じようなことを殿下も思っていたとは……。
「殿下、わたしこそ殿下のような魅力的な方の妻でいていいのだろうか? もっと殿下にふさわしいお方がおられるのでは? と思うことがあります」
わたしがそう言うと、殿下は驚く。
そして、殿下は、
「あなたがそのように思っていたとは思いませんでした。お互いにそのようなことを思っていたのですね」
と言った後、
「わたしはあなたそのものが好きなのです。あなたが好きだから好きなのです。あなた以外の女性を好きになることはもうありません。わたしはあなたのことをそれだけ愛しているのです」
とやさしく言った。
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