第38話 年明け2
「それは本当なんですの?
今の今まで、神崎くんからそんな話、一度もされていなかったではありませんか?」
「私も初耳で、彼の言うことだから信用できないといえばそれまでなんだけど。
そうも言い切れないでしょう。」
放課後、私はまみやちゃんをこっそり呼び出して、事の顛末を話した。
「でしたら、きっと神崎くんは、かれんちゃんを悲しませたくないから、黙っていたのですわ。突き放すようなことを言ったのも、ゆくゆく一緒にいられないことがわかっていたから、ああするしかなかったのですわ。」
まみやちゃんの表情には悔しさがにじみ出ていた。
「そうなのかな。
でも、もしそうだとしても何も変わらないよ。」
理由らしい理由ができたけれど、それでも、王子はすべて考えた上で結論を出したんだ。その事実は変わらない。
「かれんちゃんは、それで良いのですか?」
まみやちゃんの問いには王子を本当にあきらめるのか、ということが意図されている。
「まだわからない。でもこうなってしまったからにはもうどうしようもないよ。」
今まで通りといえば今まで通りの毎日だしね。
「でも、ブラッドの言うことが正しければ、
神崎くんと学園生活を送れるのも、あと数ヶ月で終わってしまうことになりますわ。」
それを聞いて、私は顔面蒼白になった。
このまま行けば、彼とはもう二度とあえなくなってしまう。
「__そうだね。」
今の私にはそう返すことしか出来なかった。
「神崎くんも酷い人ですわ。そんな大事なことを黙っているなんて。もう少し早くに教えてくださっていれば、私達の対応も変わって来ましたのに。これでは、かれんちゃんが気の毒です。」
それから私は学校中の噂のほとぼりが冷めるまで大人しく過ごした。ブラッドも王子も、以前の様に私に絡むことが一切なくなってしまったから。私も目立つ行いを避けて大人しく過ごすことを心掛けた。最初こそ様々な憶測が飛び交って、あれやこれや騒ぎ立てたが、しばらくするとそれも飽きて、騒ぎも収まっていた。
結局のところ、私が実はあの晩、王子に告白して降られたなんてことを知る人はいない。
王子は、あれから私に声をかけてくることは一切なくなった。もそもそも私なんて知らなかったみたいな様子で、いつものように授業で一緒になれば、彼は取り巻きの女子たちに囲まれて忙しそうにしている。
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