第23話 ハロウィーンパーティー

「そういえば、もうすぐハロウィーンの時期ですわね。」

学校での昼下がり、いつものように中庭のベンチに座ってランチを囲んでいた時、まみやちゃんが思い出したように言った。


「ハロウィーン?」


「ああ、確かに、もうそんな時期か。」


私はよく知らなかったけれど、一緒にいた桜子ちゃんと初音ちゃんは思い出したようにうなずいた。


「この学園のハロウィーンは特別なんだよ。

なんでも、10月31日は普通科生徒も含めて仮装での登校が許されるの。

だから、私服でもコスプレでもなんでもOK。露出さえなければね。先生たちだってこの地は熊の着ぐるみとか、ゾンビとかお化けのコスプレして授業するんだって。」


「超楽しそうじゃない? 」


初音ちゃんも桜子ちゃんもテンション高めに盛り上がっていたけど、私はそんなの全然知らなった。


「でも、かれんちゃんは、もはや通常営業だよね。いつもフリフリだし。」


「そんなことないよ。ハロウィーンならハロウィーンのがちゃんとあるんだから」


私は奮起した。ロリィタには様々な種類がある。いつも私が来ているのはポップで明るい基調の甘ロリスタイルだけど、もっとダークで黒を基調とした「ゴシック・ロリィタスタイル」なるものだってあるのだ。



「ハロウィーンねえ。渋谷とかで毎年イベントやっているのは知ってるけど、学園ではみんなどんな格好してくるんだろうね。ICクラスの人たちは見応えあるのがいっぱいいそうだけど。どうせまた、彼らの影ものになっちゃいそう。」


「そうだよね。せっかくなら、みんなとは違う。ICクラスのみんなにも引けを取らないコーデで挑みたいよね。」

初音ちゃんの嘆きに、桜子ちゃんも同意した。


「ちょっと待って、みんなの目の前に、その道のプロフェッショナルがいることを忘れていない。」

私はおもむろに立ち上がった。


「え、かれんちゃんが?」


「みんな私がどれだけのお洋服コレクションを備えているか知っているでしょう。

ハロウィーンだって任せてよ!

 絶対にICクラスと引けを取らないことは保証する。」

ただし、みんなが嫌じゃなければ。だけどね。私は小さく付け加えた。


「それは、嬉しいけれど。」

みんなの表情は複雑だった。


「かれんちゃん。お気持ちは嬉しいのですが、わたくしたちに大事なお洋服を貸し与えてしまって大丈夫ですの? 嫌な思い出をぶり返してしまうようですけど、ついこの前大事なお洋服を台無しにされてしまったばかりですわ。」

まみやちゃんは神妙な顔つきだった。確かに、それは一理ある。今も胸を痛める忘れることはできない。


「それもそうなんだけどね。」

確かに、今ここでみんなにロリィタを進めてしまうことで、みんなにも私のように批判の矢面に立たせてしまう可能性だってあるんだ。私は自分の発言をちょっと後悔した。


「私、来てみたいなロリィタ。もしかれんちゃんがよければ。」

声を上げたのは初音ちゃんだった。


「私も、実はかれんちゃんのお洋服、ずっとかわいいなとは思っていたんだけど、なかなか言い出せなかったんだよね。」

ほら、ほかのみんなからの視線とかもあって。桜子ちゃんはちょっと付け足した。


「いろいろいう人いるけどさ、かれんちゃんのお洋服に関しては、何も悪くないんじゃないか。というか、もとはといえばICクラスの人たちがあれこれ騒ぎ立てたことが原因でしょ。」


「ありがとう! 」私は激しく同意した。


「確かにそうですわね。私たちと過ごしているかれんちゃんはとても楽しくて優しくて良いかたですし。」

まみやちゃんはベンチから立ち上がった。


「もし、かれんちゃんがよければ、私たちにもロリィタファッションを教えていただけませんか。クラスのみんなにも、学校のみんなにも、お洋服のことをよく知ってもらいたいですものね。」


「良いの?みんな。」


「もちろん、かれんちゃんはわたくしたちの大事なお友達ですもの。」


 なんだかすごく感慨深い気持ちになってしまった。私の周りにはすでに十分すぎるくらい大事なお友達がたくさんいたことに今まで気が付かないでいたなんて。こんな私このことを気にかけてくれたみんながいたんだ。みんなの為にも私はこのハロウィーンを精一杯盛り上げていくと心に誓った。


 


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