第24話 ハロウィーンパーティー2
待ちに待った、運命の晴れ舞台が訪れた。私たち4人は、寄宿舎の私の部屋に集合してドタバタと部屋中を駆け回っていた。ドレスの背中のファスナーが閉まらないもの、ウィッグをかぶろうとしてウィッグネットに髪の毛がしまい切らないもの。普段あまりやらないメイクに右往左往しながら、ぎこちない手付きででアイラインを引いているもの、そして、そんなみんなの準備を手伝いながら傍らでせっせとめかしこんでいる私。
今日のコーデはとっておきだ。今日はいつものポップなカラーのフリフリは卒業して、みんな黒を基調としてバイオレットとかオレンジとか、鮮やかな深紅のプリントやレースが施されたドレスに身を包んでいる。
桜子ちゃんは、立ち襟カラーに深緑のAラインワンピース。布地はクロスとかシャンデリアとかのフロッキープリントが施された総柄の生地で、とあるメゾンでは人気のシリーズだ。長い黒髪をツインテールにして巻き上げて。蝙蝠みたいなリボンとフリルカチューシャを載せている、その名もハロウィーンKAWAIIモンスター。
シックな桜子ちゃんは無地のロングドレス。ウエストはドレスとおそろいの生地のコルセットがついていて、背中には大きなリボンと、その下から三弾罰するフリルが揺れている。頭にはシルバーブロンドのロングウィッグをかぶって、さらにその上にリブの高いボンネットを載せている。リップも妖艶な雰囲気のブラックチェリーみたいなレッドで、まるでハロウィーンに降り立った本物の魔女みたいだ。
まみやちゃんには、一時期伝説的人気を博した、とあるメゾンの吸血鬼柄JSKを来てもらった。黒いバーミンガム生地の裾には、イケメン吸血鬼が夜空を駆け巡って、美しい美女の住まうお城へと訪ねるストーリーが描かれたプリントが施されている。星空が煌めき、深紅の薔薇の生い茂る庭園には、隠された彼の棺桶がおかれていたり、高い塔の上の一室には、愛する人を待ちわびて眠る美しい美女が描かれている。儚げで美しいまみやちゃんにピッタリ。長いロングをハーフアップにして襟足をカールさせて、頭にはブリムのついたボンネットを載せている。
そして最後に、この日の私はいつもとは一味も二味も違う。だっていつもだったらパステルピンクのワンピースとか、サックスブルーやハニーイエローのゆめかわいいお洋服に身を包んでいるけれど、なんと今日は特別!ヘアスタイルも金髪ボブから漆黒ロングへと変貌を遂げている。この日のために悩みに悩んで選んだのは、怪しげなカトリックのシスターを思わせる全身黒のロングワンピース。エリは蝙蝠みたいな形の立ち襟になっていて、ウエストから下にはゴールドのラメでプリントされた豪華な棺桶と、ゴーストが潜む墓地が並んでいる。その上に重ねるようにして、ウエストから先に黒いベールが縫い付けられていて、墓場のその怪しげな雰囲気をひた隠している。書くとなんだかへんてこな柄に見えるけれど、実物を見るととっても綺麗で素敵なんだから。長い黒髪ロングの上には、シスターが礼拝の時につけているような黒いベールのついたヘッドドレスを載せている。
全員がそろって装備を見見つけ終わった後の景色は壮観だった。なんてことはない寮社の一室に、黒魔術によって4人の魔女姉妹が降り立ったみたいだ。みんな普段とは違う風貌にびっくりしていたけれど、全員とってもよく似合っている。これなら、学校中を相手にしたって誰にも負けない素敵な仮装だ。
私たちは、どきどきと浮足立つ期待と高揚感を胸に、ハロウィーンの学校へと足を踏み入れた。
「ねえ見てよ、佐伯先生、今日はマ〇オのコスプレしてる。」
「アンジェリーナ先生は流石、すごい美人なゴーストブライドだ。」
校内はこれでもかというほどのコスプレや仮装をした学生や先生たちであふれかえっていいた。もはや授業どころではないのは言うまでもないのだけれど、コミケや渋谷ハロウィーンだってここまでいろんな姿の人が一堂に会すことがあろうかというほど、いつもの学校からは想像もできない姿が広がっていた。
「なんだかすごいね、みんながこっちをじろじろ見ているような気がするよ」
「大丈夫かな、ちょっと私やり過ぎちゃったかも。」
冷や冷やしている私をよそに、まみやちゃんは冷静にフォローした。
「そんなことありませんわ。みんな羨望のまなざしでこっちを見ているではありませんか。やはり、みんなかれんちゃんが可愛くてうらやましかっただけですのよ。」
「今日は、私たち4人に、だけどね」
初音ちゃんは飛び跳ねるようにして笑った。
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