第26話 ハロウィーンパーティー4

 

「ところで、噂の神咲君って、今日はいったいどこにいるんでしょう。めっきり姿が見えませんわね。」


確かに、あんなに目立つって言われていたのに、校庭や中には出ていていないということなのだろうか。


「確かに、目立ちすぎて疲れて隠れちゃっているとか?」


「逆に奇想天外な恰好すぎて恥ずかしくて出てこれないんじゃない?」

確かに、私も気にならないといえば嘘になってしまう。午前中も何かにつけてICクラスのほうを遠巻きに見つめていたけれど、彼らしい影は見かけていない。


「かれんちゃん、やっぱり気になっちゃうんじゃない?」

桜子ちゃんがにやにやしながら問いかけた。


「そ、そんなんじゃないよ。」


「またまた~。彼にかまってもらえなくて寂しいくせに。」


「そんなんじゃないって。」


「でも、確かに私も気にはなっていたんだよね~。」


「ICクラスの生徒の仮装も気になるし、ちょっと教室行ってみない。」


「え~。大丈夫なの?」

私は及び腰だった。今日はみんなもいるのに、友達を巻き込んでまで、またトラブルになったりしたら。


「大丈夫だよ。私たちが付いているんだし。」


 そんなわけで、私は気の進まないままICクラスのある別棟へと向かった。


「あれ、かれんとその取り巻きたちじゃん。こんなところで何してんの?」


 びくびくしながら教室へと向かう途中、早くも厄介な輩に絡まれた。ブラッドだ。

茶化し笑っているブラッドは、今日はいつもの金髪の巻き毛をわざとぼさぼさにして、整った顔には汚らしく白粉と、口紅で書き殴られたピエロの笑み。錆びれた紫の背広をひっかけて座り込んでいる。どこかで見たことがある。これは確か_。


「ジョーカーじゃん。バットマンの。」初音ちゃんが指さした。


 そうだ、映画史にも刻まれる「ダークナイト」の名悪役ジョーカー。まぎれもないジョーカー。よく見れば、後ろに控えているラグビー部の取り巻きの一人はバッドマンだし、女子の一人はスーサイドスクワッドのハーレイクインのコスプレをしている。似合いすぎる、顔がとか見た目が、とかじゃない、性格がそっくり。私の思う彼らの印象は今のところ凶悪そのものだし。


「そっちは何、4人そろって今日はモンスターガールってわけ?」


「どう。似合ってるでしょう。」

今日は桜子ちゃんや初音ちゃんも強気だ。彼らを前にしても物おじしない。


「4人そろってあいつの手下みたいな格好だな。実際手下みたいなもんか。

ご主人様に遭いに来たんだろう。奴なら教室の奥でたそがれているぜ。今日はいつもみたいなくさい優等生気取りみたいな芝居もしてないみたいだしな。」


 奥を見やると、廊下の奥、ちょうどICクラスの入り口があるあたりには少しだけ人だかりができていて、入り口の端に顔を突っ込んで中を覗き込むようにしている、女子たちのなんにんから、時折黄色い感性が上がっている。


「元気がない。彼が?」

初音ちゃんは意外そうに呟いた。


「じゃあ元気づけに行かなきゃ。」

私以外の3人はさらに浮足立って、教室のほうへときゃっきゃしてかけていった。


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