第12話 連絡先と約束
長かった修学旅行も終わって、やっと終業式。みんなと会ってからまだ3か月程度しか経ってないことにびっくりする。思えばすでにいろいろあったなぁって。たぶんこれからの夏休み、もっといろいろなことをするだろうけど。
終業式も特に大したことはなく、通知表もらって、お知らせを聞いて、それくらい。
夏休みの宿題にすでに手を付け始めてるから、きっと楽しく過ごせるだろう。他の人の宿題が心配ではあるけど。
宿題とかを先に進めてるのは他にも理由がある。それはなんてったって、今は大好きな小春さんのことを考えて仕方ないから。たぶん勉強でもしてないと脳がピンクで埋まってしまう。それくらい、今の私は有頂天になっていた。だ、だから、今年は、好きな人と、で、で、デート...なんて...考えてたり...考えるだけで恥ずかしくなってきたのでいったんストップ。そもそも同性なら簡単に誘えるでしょ、とか言われそうだけど、私にとっては異性を誘うくらい勇気のいることなの!
そんなわけで夏休みに花火大会とか、二人で行けたらなー、なんて空想する。でも重大な問題が一つある。連絡先が、わからない。別にスマホを持ってないわけじゃない。柊さんとかのは持ってるし。でも、よく考えたら小春さんのだけ持ってない!!!!これは由々しき事態だ。私にとっては。
そんなわけで聞きたい。でも顔を見るだけで恥ずかしくなるし、普段みんなで帰ってるし、タイミングがない。どっか適当なところで...。なんて思ってたけど、みんなもう帰る雰囲気になっていて。そんなわけでぞろぞろみんな教室の外で、小春さんも外に出ようとしてる。おもわず
「あの、小春さん!」
思わず大きい声になって、恥ずかしくなる。教室に残っている人がもういなかったのが救いだ。クラスメイトはみんな夏休みに浮かれて先に帰っていた。みんな ?みたいな顔をしている。あー言っちゃった!!!しかも大声で!!!顔が赤くなっているのも気づかないまま、頑張って言葉を押し出す。
「あの...。連絡先...交換しませんか?」
小春さんがちょっとクスってした感じで笑う。
「それなら、普通に声かけてくれればいいのに。」
そのクスってした顔もかわいい。また声にならない感謝を述べて、交換したわけだけど。
何話したらいいのかわからな~い!!!家についてベッドで足をバタバタさせながら、大好きな相手の連絡先が入ったスマホを見つめ、ニマニマしている。あとちょっと手を動かせば、メッセージだって、あるいは通話だってできるだろう。でも勇気だけが、致命的に足りない。
そもそも相手に何を送ればいいんだろ。まず挨拶?やっほーとか?あまり考えても仕方なさそうなので、そのまま送ってみる。
そしたら、すぐに返事が来た。やっほーって。かわいい。かわいすぎる。あまり変に返事が詰まってもあれだから、とりあえずふと思ったことを適当に返す。
今何してるー? 宿題してたよー 私は昨日までに1/3くらい進めちゃったー 早いね、何か予定でもあるの?
来た。いっそ、話の流れに身を任せて言えば、言えるかも。なんて。
『良ければ、一緒に花火大会に行きませんか?』
夏休み最後の金曜日にある、近くの神社でやる花火大会。もしそこに二人で行けたら、そこで...なんて、ロマンチックなことを考える割に行動力はないのが私だけど。きっと、行かなきゃ始まらないよね。
なんて思っていたけど、恋は盲目とはこのことで。
『そうだねー、みんなで行こっか』
と返事がくる。向こうから見たら私は友達の一人だろう。だけど私から見たら、大好きで大好きでしょうがない人で。
でも、まだ『二人で』、なんていうには私は弱いままだった。
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