第13話 海と関係

 そして夏休みも始まり1週間。すでに暑い日は毎日のように。太陽が照り付けていて、クーラーが欠かせない。でも今日は外。なぜかっていうと、海に行くために駅で待ち合わせをしているから。ちょっと前にした約束通り、私は海に入らないから水着を持たず、白いフリルのついたシャツに、デニム生地のショートパンツ、白いサンダルでお団子ヘア。

 誰にじっくり見られるわけでもないけど、休日の私服だし、何より好きな人にかわいく見てもらいたいから。それだけで、ちょっと面倒なおしゃれもあっという間に大事な気がしてくる。恋って人生に大事かも、なんて。

 少し早めに来たけど、みんなもすぐやってくる。

 紬ちゃん、今日は早いんだね、なんて茶化したら、いつもじゃないやい!ってぽかぽかと叩かれた。

 のんびり電車に乗って、あっという間に鎌倉のほうの海水浴場まで。みんなが着替えてくる間に、私は砂場にシートとか簡単に準備する。さすがにパラソルとか持ってくるには大変だったからやめた。どうにかして持ってくるなり持ってきてもらうなりしてもらえばよかったな、なんて思ったけど後の祭りだ。

 水着でみんなが出てきたけど、とても気まずい。だって前世があるってことは、そういうことだし...。みんなに正直なことを言えないのがなおさら罪悪感。

 海野さんはいわゆるワンピースタイプ?ってやつで高月さんはあまり泳ぐ気がないのか白いシャツを着てて、ショートパンツっぽい感じの。残り3人は無難にビキニな感じだ。

 やっぱり私も頑張ってきたらお揃いできたかなぁとか思ったけどやっぱり背に腹は代えられない、そんな気がする。

 主に海で遊んでるのは星乃さんと柊さんで、砂で遊んでるのは海野さん。高月さんは、飛び込みできるところで飛び込もうとしてる。怖いもの知らずなの...?

 そして小春さんは隣に。キャー(≧∇≦)って感じ。泳がないの?って聞いたら、今はそんな気分じゃないんだって。海に来たばかなりなのになんでかな。って私が言うのもおかしいけど。

「ねーえ、なんで海とか苦手なのさ。そういえば」

「...」

 とても答えにくい。理由が理由なのもあるし、それ以上に好きな人に弱さを見せたくない気がした。でも答えないのも変だし...

「ちょっと、答えにくいかな。」

「そっか。」

 聞かないでくれたのが嬉しい、けどちょっと申し訳ない。とはいえ、転生のことを言ったって、信じてくれないだろうし、変な目で見られそう。仲のいい人たちならなおさらだ。

「ま、だれにでも秘密はあるからね、言いにくいことの一つや二つ」

「ううん、こっちこそなんかごめん。」

 あまり心配はかけられない。また無理して笑顔を作って。私は何もないふりをして砂遊びに行く。小春さんは高月さんがやってた飛び込みに行ったみたい。なんか意外。


 お昼は焼きそばを海の家で食べた。こういうのって一度あこがれてたんだよね。みんなでかき氷も食べた。私は頭がキンキンしないタイプだけど、周りは3人ほどキンキンしてた。傍から見てる分にはちょっと面白い。当の本人たちからそこそこ怒られたけど。

 そして午後は海に入らずみんなで遊ぶ雰囲気に。ボールで遊んだり、スイカ割りをしたり。おやつにスイカを食べて、またみんなは海に向かう。みんな、楽しそうでよかった。でもやっぱり、一人の寂しさは消えなくて。そんなことをぼーっと考えて20分くらい、気づいたら海野さんが上がってきてた。ちょっと疲れてるみたい。

 ふぅー、ってかわいい声を出して隣に座った。静かなのに気を使ったのか、向こうが会話を切り出す。

「実はさ、日向さんと仲良くなるまでは、ここまで仲良くはなかったんだ。」

 どうやら、海野さんと高月さんは本を読むけど、それ以外の二人は本を全然読まないから会話が合わなかったりで、仲良くはあるけど...みたいな感じだったみたい。そんなときに、いわゆるパイプ役?みたいになったのが私ってことみたいだ。

「だからね、すごく感謝してるの。ありがとね。」

 なんて笑顔で言われてしまった。そんな風に見られてたんだな、って客観視できてちょっと気持ちが落ち着いたかも。

 そんな当の海野さんは柊さんのバッグを開けて、何かを探してる。何してるんだって思ってたら、取り出したのは水鉄砲だった。ささっと水を入れてきたかと思えば、両手で持ってしっかり狙って、撃つ。ヒャ、って感じのかわいい悲鳴。あ、ちょっとトイレ。って海野さんが急に離れた。そのあと『がんばってね』、って聞こえた気もするけど。即座にこっちを向く小春さん。え、私!?

 そのあとは、もうめちゃくちゃな感じだった。濡れない予定だったのに、どこからか水鉄砲を見つけて追いかけ回された。最終的に服が濡れないようにうまくやってくれてたみたいだけど、足とかはしっかり濡れた。


 そのあとは、なんやかんや旅行でお風呂も嫌がってたのを知ってか足湯に浸かって、ぽかぽかして電車で帰る。最初はみんな楽しかったね~、とか疲れた~、とか言ってたけど、あっという間にみんな寝て静かになっちゃった。

 あの時の仕返しじゃないけど、一枚パシャリ。みんなのかわいい寝顔と記憶が残った。

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