第14話 悩みと相談

 そして海から戻って数日。いま私は、いやずっと恋した時から、考えていたことがある。それは当然、私の恋の悩みだ。

 今の私は、女性の体で、たぶん周りからもそう見られている。その一方で、私には明確に前世の男性の記憶があって、そういう意味では男性的だと思う。それに、傍から見たら女子と女子の恋愛、つまり同性の恋だけど。そもそもそれも正しくあっているのかすらわからない。

 つまり、自分で自分がわからなくなっている状態だ。

 とはいえ、自分でその答えが出せるわけもなく、人に聞けるような話題でもなく...堂々巡りって感じ。いつもこんなことを考えているのはわかっているけど、それを何とかしないと進めない気がしてきて。もしかしたら逃げでしかないのかもしれないけれど。それに、答えが明確に出るとも限らない。こういう場合って、どうしたらいいんだろ...


 もやもやしても仕方ないので、何か策を打ちたいと思った。でも、いい策も出ず。そんなとき、ラノベの設定にそんなのがあったなって。図書室は今日休みだし、図書館に行ってみることにした。そんなラノベが公共な場所にあるのかわからないけど。

 というわけで前に勉強しに来た図書館で、ゆっくり本を読んでみる。きっと知ってる人に会いそうだけど、あまり考えてこなかったので服装は軽い感じで。そしていくつかTSものとか転生ものとか、そのあたりに絞りつつそれっぽいのを手に取っていろいろ目を通す。そういうラノベはなくて、いわゆるLGBTモノばかりだったのがちょっと残念だったけど。

 そしていい情報とかも特になく帰宅。しょ、しょうがない、こんな時はインターネットだ!俺はもともとインターネットを含む広範囲オタク、その力を今!

 ...なんてくだらないことを言ってみて、パソコンを開いて調べてみると。

「もしかして一時の恋!?女性の同性愛って?」

「同性愛ってダメ?どう思われる?調べてみました!」

 ...しょうもないサイトしか出てこない。いつの間にかインターネットの質も大幅に落ちて、私の感情を揺さぶる言葉しか出てこない。

 夢にうなされたみたいにう~んって言い続けてたら、柊さんからメッセージだ。運動のお誘い。何も考えられないので、急いでそれっぽい服装に着替えて走る。


 急いで走った割には時間がかかったけど、何とか合流できて。とりあえず前よりゆっくり目に、一緒に走り始める。これでも時々一緒に走って、体力はそこそこついたほうだと思う。

「そういえば知花っち、何か悩んでる?」

「どうしたの?急に」

「いや、悩んでる顔してるなーって」

「やっぱそう見える?」

 今日はやたら素直じゃん、なんて言われたけどあまり気にしないことにして、近くのベンチまで走った後話を聞いてもらうことにした。

 恋をしていること。でもその恋に戸惑いがあること。相手に嫌われることを怖がっていること。周りとの関係が壊れたら怖いこと。ぼかしたりうまく隠しつつ言ったら、あまりうまく言えなかったけど。

 柊さんは自分は恋とかわからないけどって前置きを置いたうえで、

「キスでもしちゃえばいいんじゃない?」

 なんて。キ、キス!?

「もちろん未来がわからないのは怖いけどさ、実際やっちゃえば、何とかなるんじゃない?あとからさ」

 私が好きな相手だったらそれはそれで難しいけど...なんて変な方向に考え出してるけど、でも。すごい腑に落ちたような、ふっと軽くなったような気がして。思わず、紬ちゃんを抱きしめる。

「うわっ、急にどうしたのさ」

 といいつつ、撫でてくれる手が優しかった。


 運動の疲れと少し軽くなった悩みの僅かなやさしさで、私はゆっくりと眠りについた。

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