第18話 花火と名前
とりあえず、どこから行こうかなぁ。今、私の世界は人生で一番輝いていて、なんでも小春さんとなら素敵に見える気がする。そんな気持ちの私は、喉が渇いていることも忘れて綿あめを買ってしまう浮かれ具合だ。
「うへ~、喉が渇いてるからすっごい甘くてつらい...」
「もー、しょうがないなぁ。」
小春さんがペットボトルの水を渡してくれる。思わずぐびぐびと飲んでしまう。プハー。ってこれ間接キス!?そんな気がしてまた恥ずかしくなって。
次に見つけたのは型抜き。よくある、綺麗に抜いたらお金がもらえるようなやつだ。
といっても、それじゃ子供がつまらないって思ったのか、あまりうまく抜けなくても割引券がもらえるらしい。もちろん私はへたくそだった。意外なことにいつも騒いでる組が上手だった。毎年のようにやってたらなんとなくコツを掴んだんだって。でもその割には射的ダメダメだったけど...本人曰くそんなものらしい。
気づいたら夜も7時くらいになったので、焼きそばをてきぱき買って階段をのぼり、社殿のほうまで戻ってきて。途中で花火が始まっちゃったので、階段に座ってみることに。あまり行儀良くはないけどね。
こっそり小春さんと手をつなぐ。そんな些細な動作も恥ずかしさとうれしさで特別な思い出になって。もちろん、みんなで見る花火も。今までこんなに花火を綺麗だと思ったことはないかもしれない。
そのあともヨーヨー釣りをしたり、色々食べ歩いたり、何もすることがなくなってそばの公園で時間を待ったり、くじ大会でワクワクして。
あっという間に夏祭りも終わりを告げて、帰り道。私と、小春さんと、海野さん。ほかの三人は別の方向だからね。ここは二人で帰りたかったなぁ...。
「あ、私要時思い出したから帰るね」
海野さんが急に駆け出す。うれしいような、そうじゃないような...
「ねぇ海野さん」
「どうしたの?小春さん」
「今日のこと、秘密にしておいてね」
「あー、ばれてたんだ」
ちょっと照れたしぐさを見せる海野さん。え!?見てたの!?あれを!?もうどうやって生きてけばいいかわからなくなっちゃうよ!?
「もちろん、だれにも言わないから。そこは安心していいよ。」
そんな話をして、走り去ってしまった。まさか見られてたなんて...うう、穴があったら入りたいよぉ~。
そして二人きり。さっきの状況も含めて、気まずい状態になる。こういう状況で、何話せばいいんだっけ。今までどんな感じで話してたんだっけ。
「そういえばさ、下の名前で呼んでよ。せっかくだし」
小春さんが落ち着いた顔で言ってくる。ちょっとムカつくのでいたずらしちゃお。
「じゃあ...夕依?」
「...思ったより恥ずかしいからちゃん付けにして」
顔を赤らめてとてもかわいい。思わず調子に乗ってしまう。
「しょうがないなぁ、夕依は。」
あ、また顔が赤くなった。
「知花のバカ。」
でも、ちょっといじりすぎたみたいだ。急いでなだめないと。
こんな感じで、あっという間な夏休みは終わりを告げた。
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