第19話 文化祭委員と交際
いろいろあった夏休みが終わりを迎えて一週間くらい。今は、文化祭のアイデア出しだ。といっても意見を考える立場じゃなくて、意見をまとめる立場。つまり、文化祭委員ってわけ。小春さんが立候補したから、私もと思って立候補したんだ。
「それじゃ、アンケート取りまーす」
「今のところ出てるのが、メイド喫茶、お化け屋敷、駄菓子屋、演劇です」
みんなどれにするか決めかねて、ざわざわし始める。そりゃそうだ。だってめんどくさそうなのとか嫌だしね。その気持ちは正直私も一緒だ。その結果、一番簡単そうな?駄菓子屋になった。
みんなは出し物のほうを考えて、委員の私たちは先輩と集まって予算とか出し物がかぶってないかとかを整頓する。A組とC組は定番でそれぞれメイド喫茶とお化け屋敷みたいだ。そっちを選んでたら被ってまためんどくさそうな...とりあえず安堵した。あとは予算とかの話し合いをして今日はおしまい。といっても、大体小春さんが先導してて、私はほとんど何もしてなかったけど...
みんな部活で大体そっちの準備があるので、同じ通学路でも久々の小春さんと二人での帰宅。最近はたまたまだとしてもいいことが続いていてちょっとだけ気分が上がる。でも、そんな相手はちょっと素っ気なくて。何か悩んでる?って聞こうと思ったけど、たぶん私のことだから、声をかけにくくて。私は用事があるふりをして、一人で帰ることにした。
◇
日向さんが用事があると先に帰って、一人になった帰り道。正直一緒にいても気まずかったので、一人になれたのは少し助かっている。
同性と恋愛をして、場合によってはキスとかデートをして。日向さんのことは、前からちょっと気になっている。もちろん恋愛的に見て。でも、それが正しいのか。その選択をして、日向さんを不幸にさせないか。いや、逃げてるだけで、自分が不幸にならないか。いろいろ言われないか。いろいろなことを考えてしまって、答えが出ない。普段こういう理屈じゃない物事は考えたりしないタイプだからか、余計に悩む。
そもそも、相手のどんな部分が好きなのか、考えてみる。友達思いなところ、こんな私にも普通に接してくれたところ、趣味が合うところ、何気にかわいいところがあるところ、でも落ち込むときはすごく落ち込んで、面倒を見てあげたくなるところ...自分で思うよりいっぱいあって、それぞれに思い出がまたあって。
今私も好きっていえば、きっと向こうは喜んでくれるだろう。でも特別な関係になって、そのあと。別れる未来を考えてしまって、それが一番つらかった。
帰り道も家に帰ってからもずっと考え続けていたからか、声が聞きたくなって、電話をかける。
「どうしたの?夕依ちゃんから掛けてくるなんて」
いつも通りの声が聞こえる。
「実はさ、本当に付き合っていいのかな、って」
「たぶん、周りからの目とか、そういうことでしょ?」
「うん。」
やっぱり、同じことを考えてたんだろうな。そんな相手への安心感はあった。
「やっぱり、みんなには隠して、少し遠くにデートに行って。そんな関係になるとは思う。将来どうなるかも私にはわからない。」
「こんなことを言うのはおかしいけど、それでも、私は夕依ちゃんが好きで。大好きで。一緒にいたい。だめかな。」
彼女は、こんなに勇気を出して大好きって言ってくれて。それなのに、私は。
「本当に、私でいいの?」
「夕依ちゃんがいいの!」
思わずうるっと来てしまった。でも、それ以上に、ちゃんと言わなきゃ。
「私も知花ちゃんが好きです!付き合ってください!」
とっさに出てきたのは逆告白だったけど。
「もちろん。」
こうして、本当の意味で私は知花と交際を始めたのです。
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